週刊金曜日 編集後記

991号

▼このところ沖縄・名護市の知人らから頻繁に電話やメールがくる。「あの連中が飲み屋で密会していた」「大阪の海洋系土木の会社役員と名護の業者がゴルフ三昧だ」など。なかには作為的なリークも混じっていたりする。
 政府は辺野古への基地建設を強行するかまえだ。カネが動くところにヒト、モノ、情報が大量にとびかう現実、だろう。本筋はどこにあるか、見極めはいつも難しい。
 ひとつの、見落とせない事実がある。昨年8月、ある会社の社長がみずから命を絶った。基地から派生するカネをにらむ面々が銀行支店長だった彼をひっぱってきて経営にあたらせていたのだ。そのことに後で気がついたが、がんじがらめにされ、抜け出ることはできなかった。ひどく逡巡した様子が関係者の証言から伝わってくる。「事業を進めろ」「進められない」、こうしたやりとりがつづいた末、行方をくらませた。
 新聞の「おくやみ」欄にしか載らなかった出来事だが、基地問題の、ある意味では芯をついている、そう思えてならない。(野中大樹)

▼安倍政権が、集団的自衛権行使が合憲だと強弁しているのをみると、アニメの「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX 」(テレビシリーズ)を思い出す。近未来、第三次核大戦、第四次非核大戦後の2030年の日本が舞台。核が東京に落とされ、東日本の大半が水没、首都は福岡へ移り、神戸沖の人工島副都心に公安9課(攻殻機動隊)の本部がある。
 人々は電脳化しネットワークに直接アクセス、身体を義体化しサイボーグ化している。サイバーパンクな世界である。グリコ森永事件に似た「笑い男」事件等、政権中枢の絡んだ事件を公安9課が荒っぽい方法で解決する。自衛隊が軍になり、憲法9条は改正されているはずだが、国外へ派遣できず、対外的な関係に影を落としている。
 荒唐無稽な話だが、安倍政権が虚構の世界に近づいている。アニメでは9条が縛りをかけ、ストーリーに幅を持たせる。現実の安倍政権は奥行に欠け、現実味が乏しい。アニメの方がリアルに憲法に忠実なんじゃないかと錯覚を起こしてしまう。(樋口惠)

▼前号、小室等さんが「なまくらのれん」で紹介された映画『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』を、5月4日に東京・江戸川区の小松川区民館で見ました。
 昨年の10月末に映画は完成。しかし上映劇場が決まらず、ずっと自主上映会を行なってきた。ようやく映画の評判にも推され劇場公開が決まりました。東京・ポレポレ東中野で5月31日からのロードショーです。
 狭山事件が起きたのは東京オリンピックの前年、1963年5月1日。私が狭山事件を知るのは9年後の72年。当時は現地学習会として狭山にも数回行きました。犯人とされた石川一雄さんは獄中に31年、94年有罪のまま仮出獄してから今年で20年が経ちます。
 いまから4年前の石川さんとの出会いがきっかけで金聖雄監督はカメラを回し始める。
 出獄2年後に早智子さんと結婚。狭山に戻って生活しながらも無実を訴える二人を監督は丁寧に映し出す。兄の六造さんの言葉も胸に突き刺さる。過ちを認め再審への重いフタを自ら開けなくては司法に明日はない。(土井伸一郎)

▼今クールのテレビドラマは刑事ものオンパレード。どうしてこうかぶるのか。談合ですか? スパイいるんですか? ということで、お腹一杯。まったく見なかったもの、初回で失礼のものなど、死屍累々。そんな中生き残っている「BORDER」。死人が話しかけてくるという全然正統派ではないところ、全編を通した陰謀などがない見やすさ。基本一話完結はやはり刑事ドラマでは大事。対してごっつう太い背骨のように大きな陰謀と多すぎる謎で貫かれているのが「MOZU Season1?百舌の叫ぶ夜」。なにしろシーズン1である。この後WOWOWでのドラマも待っている。相当な覚悟がないといけない。辛い。が、頑張っている西島様のため毎回疲れつつ視聴中。
 あとは安定の「続・最後から二番目の恋」と「弱くても勝てます?…」。T大野球部は弱いから勝てないんだけど。原作は実話らしいし、やっぱりそこは監督の差?指導者とかいう言葉自体、うさんくさいと思いつつも、ちょっと惹かれる。でも、指導者待望はやっぱり危険ダヨネ。(志水邦江)