1006号
2014年09月05日
▼韓国での暮らしは、発見と出会いの連続だったことを思い出す。地下鉄には物売りが出現し(違法だが)、シャツのシミ取りの実演をはじめたり、キュウリパックを塗りたくった緑色の顔のおじさんがパック購入を薦めてきたり。2007年、日本で連日報道されていた「日本大使館に卵を投げつける韓国人」はごく一部だとわかったし、日帝時代の呼び名なので「閔妃」のことは、「明成皇后」と呼ぶとか。「都市開発」の名の下になくなっていった裏道の飲み屋街や屋台群、市場で出会った韓国の人の温かさ、豪快さ、テキトーさ。
そうして日本に帰国すると、海外ニュースに対する周囲の関心の低さや情報の乏しさに驚いた。そんな私は、6月から国際ニュースの担当に。そして今号から、リニューアル版「たとえば世界でいま」をスタートさせました。ほかでは報じられないものや多様な視点のニュースを載せていくつもりです。「世界でいま」を読んで、「たとえば○○(どこかの国)でいま、こういうことが起きている」などと話題に上るようなページになったらこれ幸いです!(渡部睦美)
▼『朝日新聞』「リレーおぴにおん」欄で本物と言える政治家の名前を見つけた!
イラン・イラク戦争で機雷を敷設されたペルシャ湾に、自衛隊の掃海艇を派遣させようとした当時の中曽根康弘首相に「強行するなら、閣議で署名しない。罷免して結構」と迫り、自衛隊の派遣を断念させたという故・後藤田正晴官房長官だ。集団的自衛権行使容認閣議決定以来、ひょっとしたら自民党の中に反旗を翻す政治家が出現するのでは? と切望していたが、そんな気骨のある政治家は結局、過去の歴史にしか見つけられなかった。
全国で閣議決定の無効を訴える訴訟が続く。「国民の幸せを壊されないよう守っていかなければならない」として、憲法を無視する安倍内閣を集団提訴する準備のため、市民団体「ピースウイング」を立ち上げた三重県の山中光茂松阪市長。先月1日のキックオフ集会には、他県からも議員や市民が多数参加したというニュースに救われた思いをしている。こんな人が首相だったら!(柳百合子)
▼映画監督の曽根中生が8月26日死去した。代表作『天使のはらわた・赤い教室』(1979年)は、日活ロマンポルノの傑作。やはり今年3月に亡くなった俳優・蟹江敬三の、ヒロイン(水原ゆう紀)との悲恋が哀切な映画だった。
ときを同じくして、そんな日活ロマンポルノ作品などを上映した東京・新橋の名画座、新橋文化・ロマン劇場が、8月31日閉館した。小誌「シリーズ70年代の光と影」の1本、「日活ロマンポルノ」の回(2010年11月12日号)で、見開きページ写真を飾ったのがこの劇場だった。8月中旬のピンク映画3本立てでは、同館「最初で最後の」舞台挨拶が行なわれ、映画監督、俳優らが閉館を惜しんだが、そこで、同館はフィルム映画をフィルム映写機で上映する、希少な劇場だったと初めて知った。
スクリーン横の壁に、好きな神代辰巳監督の『恋人たちは濡れた』(73年)のポスターが、「次次週」の上映予定として貼り出してあったので、窓口で「(『次次週』は来ないから)あのポスター貰えませんか?」と尋ねたが、「予約済みです」と断られた。残念。(山村清二)
▼『岳人』という登山専門誌がある。1947年創刊、通巻800号を超える歴史のある月刊誌。同誌は8月発売号をもって、「東京新聞出版局」からアウトドア用品メーカー「?モンベル」傘下の出版社に発行元が引き継がれた。その内幕は当該号で詳細になっているが、どうやら休刊の危機にあった雑誌が1誌救われたようだ。
ネット全盛時代、売れ行きの落ちた雑誌の立て直しは容易でない。それを承知であえて自ら火中に飛び込む決断だったとのこと。同社創業者であり新編集長となった辰野勇氏はこう記す。「この時代、雑誌の存在価値に疑問を呈する人も少なくない。しかしあえて、紙媒体の担うべき役割があると信じる。書籍の手触りやページをめくる匂いに愛着を感じるのは私だけだろうか?1冊の本そのものが商品であり作品となる。そんな雑誌を作りたいと考えた。」(『岳人』9月号)。判型を変えて「定期購読」主体の販売方法を模索しているらしい。嬉しくなった、応援したくなった。そして年間購読を申し込んだ。(町田明穂)