週刊金曜日 編集後記

1009号

▼〈平場なら結婚しろと俺も言う〉 ってな下手な川柳みたいな発言をしたのは、こともあろうに都議会男女共同参画社会推進議員連盟の会長。性差別やじ問題を受けて活動を再開した議連で、最初からつまずいた。発言した野島善司都議(自民)は謝罪した後も何が悪いのかをおそらく理解していないだろう。でも、官房長官が首相の「女房役」と憚りなく表現され、つまり「夫を支えるのが妻」という性別役割が政府役職において公言されている国だから、議員がこのレベルでも仕方ないのか(ため息)。
 こういう意識が政界、メディア界、経済界、教育界にのさばっていると、「家事育児介護は女の仕事」が前提の社会構造が再生産されることになる。この差別構造を改めないままで「女性が輝く社会」を謳われても、ねえ。仕事も家事も育児も介護もすべてを担わされたら、輝くどころか錆びちゃうんですけど。「自分はちゃんと家事を手伝ってる」とおっしゃる方、それダメです。何がダメなのか、特集をお読みください。(宮本有紀)

▼「セブンの鈴木会長が『週刊ダイヤモンド』で面白いことを言ってますよ」。ある人から言われ、同誌9月6日号を開くと、セブン-イレブン・ジャパンを傘下にするセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長がインタビュー記事の中で次のような発言をしていた。「既存店の売り上げが落ちるようなことがあれば、出店はしません。……略。個々の店を犠牲にするからです。既存店の売り上げを伸ばし続けることが、各オーナーに対する、われわれの当然の義務です」。この記事には積み重なっている訴訟の「そ」の字もない。
 今週号のセブン連載第9回(26頁?)はまさに、「ドミナント」と呼ばれる近隣出店がテーマ。これを読むと、鈴木会長の発言がいかに虚飾まみれかわかる。実際「出店はしません」どころか、セブンは昨年、コンビニ大手5社中トップの1354店を新規出店し、その陰で287店が廃業、つまり「犠牲」になっている。コンビニ業界から“買収”されていない本誌の連載はまだ続く。(片岡伸行) 

▼子どもは暴れて騒いでなんぼ。電車内のベビーカーに文句言う人には「おめーもそうやって他人に迷惑かけて大きくなったんだよっ」と思う。多少のことは許容する懐の深さがあるつもりでいた。
 数カ月前に引っ越した、安普請のアパート。上階の部屋に挨拶に行くと可愛い3、4歳の姉弟登場。人生でいちばんウルサイ、もとい、元気なお歳頃。この時点で静かな日々は諦めた。が……想像を超えていた。ある晩、すさまじい運動会開始。走る走る。そして明らかに高いところから飛び降りている。何度も何度も。親は、下階に響く音に気づいてないかもしれない。悩んだあげく、インターホン越しに「お静かに……」と伝えた。静まりかえった。母親の恐縮した謝罪の声が耳に残る。子どもたちは叱られてしょげてるだろう。自己嫌悪。やめときゃ良かった……。
 しかし、杞憂だった。明くる日、仕切り直しの大運動会開始?。ほっとする気持ちと、もう好きにしてくれオチビちゃん、という投げやりな気持ちと。(小長光哲郎)

▼9月の終わりの午後だった。古い校舎の3階の教室の、窓から遠い廊下側の後ろの方の席に、確か私は座っていた。5時間目が始まっていて、ぼんやりと授業を聞いていた。
 突然、外でとても大きな音がして、教室がゆれた。窓側のクラスメートたちが、煙が見えると騒いでいた。火が見えたと言う子もいた。何が起きたかわからず、しばらくして校内放送で、
「アメリカの飛行機がおちたようです。みなさんのおうちのほうではないです(隣の学区だった)」
と確か校長先生が話した。
 当時新聞を時々読み出したぐらいの年齢だったので、これって新聞に載ったりするのかなとのんきに思ったのを覚えている。後で新聞記事をみて事の大きさにショックを受けた。特に、弟より小さい子どもたちが亡くなったことに。
 もう37年前のことで、この季節にはたびたび思い出していたが、ここ何年か、子どもと一緒にいる時に軍用機の低空飛行による騒音がひどいことが時々あり、思い出す機会が増えた。(佐藤恵)