週刊金曜日 編集後記

1010号

▼若年層が中心という「ネット右翼」については、以前からその幼稚さ、論ずる以前の内容のなさでこの国の病理を象徴していると思っていたが、いい歳をした大人たちも随分お仲間が多いようだ。『朝日』の「吉田証言」撤回報道にガムを噛み付き、御用紙や主要誌が一斉に「国を貶めた」だの「反日」だのとわめき立てる様からは、ネットを席巻する言説と同様、理性も事実の認識力も、他者の苦しみに対するあるべき感性の一片も見いだせない。言論での卑劣極まる真実のねじ曲げは戦後最悪の域に達し、「強制連行」だけが主要問題と思い込むまでに頭が劣化した首相好みの、「愛国的」時代が訪れたようだ。だが、「国」を掲げて舌鋒鋭く誰かに攻撃を加える風潮が支配的となる時代は、戦前の「天皇機関説攻撃」は言うに及ばず、知性が最も危うくされる状況なのだ。この局面にあって、私たちは決して沈黙しない。撃つべきは「誤報」ではなく、同紙を罵る者たちの驕慢である。(成澤宗男)

▼9月23日は早朝から快晴。6時半に起きて前夜用意したお稲荷さん3つをそそくさ食べ、デング熱のため代々木公園から亀戸中央公園に変更された「さようなら原発全国大集会」に向かう。総武線亀戸駅で降りて2両編成の東武亀戸線(初めて乗る)で亀戸水神下車。駅を降りればそこは江東区のはずれ、荒川に注ぐ旧中川に面して公園が広がる。
 9時前に到着。3メートル四方のテントブースがすでに30も張られている。日が高くなるにつれて温度上昇、11時に集会スタート。人が増えるにつれ土埃が上がる。昼飯は「亀戸佐藤」のカツサンドを食いしん坊Hが前日からチェックし調達。ありがたい。
『朝日』の「ひと」で紹介された編集長自らが販売ということもあり記念撮影や握手を求める人もいる。さっきから立ち読みしている学生が一人。かれこれ15分、声はあえてかけない。おもむろに財布から580円。やった。あなたの目に狂いはない。(土井伸一郎)

▼入閣を打診されたときに、自らそのポジションを希望したという下村博文文部科学大臣。内閣改造後も留任となり臨時国会でも、“教育改革”に取り組む。その“教育改革”を支える政務官の一人に、今回の組閣で赤池誠章参議院議員が就任したことは、私にとって驚きだった。
 この春の憲法審査会で“現行憲法は憲法違反”という発言をして真意を問われた。小泉チルドレンとして衆議院議員を一期務め、前回の参議院選挙では主だった組織票のないまま比例で20万票を獲得して当選し、注目された。チャンネル桜や『WiLL』にも度々登場する“日本大好き議員” で、“いよいよ”感があるのだ。
 福岡県・柳川市の校長が集団的自衛権の行使容認に反対署名したこと(大いに共感!)を突き上げようとしていることが、当座は気がかりだ。(小林和子)

▼好天に恵まれ、大盛況だった「さようなら原発全国大集会」。弊社テントにも大勢が詰めかけた。販売用の机をL字型に配置したため、人が増えると留まらざるをえなくなり、つい手に取って買ってしまう方も。さながら追い込み漁か(失礼)。幟が目立ったらしく『週刊金曜日』を目印に待ち合わせした方も多かったようだ。立ち寄ってくださった読者の皆様、この場を借りて御礼申し上げます。
 弊誌にも登場した反原発・かごしまネット代表・向原祥隆さんの「再稼働やめろ!」アピールは迫力満点だった。面識はないが高校の先輩なので、出馬した県知事選は注目していた。あとに登壇した広瀬隆さんが話していたが、得票は現職に対して、新人にもかかわらず大善戦。彼が当選していたら、九電も易々と川内原発再稼働は申請できなかっただろう。
 ちなみに、以前この欄で開催地変更前に集会について書いたYが代々木公園に当日現れたとの目撃情報は、ない。(原口広矢)