週刊金曜日 編集後記

1017号

▼「大人、特にオヤジたちって、本当にわかろうとしないんです」
 女子高校生を狙ったJK産業を告発する仁藤夢乃さん(23ページ)は、いまの若者の境遇への想像力に欠けた大人たちこそが、「闇社会」の跳梁を助長していると怒りのトーンを上げた。高度経済成長やバブル期に育った世代は、若者たちの選択肢がどれほど限られているかを理解せず、「俺たちだって、自分の努力で切り開いたんだ」と説教を垂れるか無関心。要するに、いつもの「自己責任」論だ。
 若者の未来の希望のなさに対する先行世代の無理解は、2006年に赤木智弘さんが「希望は、戦争」(28ページ)で訴えた当時と少しも変っていない。「派遣村」で可視化されたはずの非正規労働の過酷さは、改善されていないどころか、安倍政権が臨時国会に提出した派遣法改正案は、非正規労働者を「生涯派遣」に押し込める。解散総選挙でも法改正が単に先送りされるだけなのか。一人の大人として「未来への責任」という言葉を改めてかみしめる。(山村清二)

▼わが家の電気料金が昨年に比して15%下がった。ここのところ平均して20%は減っている。壊れた家電2製品をこの春買い換えたせいか。しかし、水道料金は増加気味。こちらは何が原因か。お風呂と洗濯機に問題があると睨んだ。一喜一憂するのも家計が苦しいからだ。出張中の家人が帰ってきたら相談してみようと思う。
 消費税の10%引き上げに待ったがかかりそうだ。ほっとする部分はあるが、喜ぶ気にもなれない。安倍政権のやることなすことすべてに反対したい気持ちがあるからかもしれないが、それだけ多くの人たちの家計が苦しいということでもあるからだ。国土強靱化の大盤振る舞いをみて、前回の消費税増税にだまされたという気持ちは一層強まった。
 衆議院は近々解散するらしい。「念のため解散」という言葉をある会合で聞いた。選挙で勝ったら、やっぱり消費税をあげてもいいよね、ってことか。ますます憎らしい、安倍政権。(小林和子)

▼やしきたかじんの闘病生活を綴った『殉愛』(幻冬舎)が売れているとか。著者は百田尚樹。
 1980年代半ば。関西で暮らしていた私は、歌手のはずが副業のトークで脚光を浴び始めたたかじんの番組で笑い転げていた。歯に衣着せぬ、名人芸。プラス、東京への強烈な反骨。大半は与太話で、その舌鋒はまだ「政治的なこと」に向けられることはなかった。
 大阪人がなぜ橋下徹を支持するのか、いま東京で暮らしていると不思議だが、たかじんがその人気の「地ならし」をしたのかな、とも思う。「高圧的/毒舌で論破/反東京」=魅力的、という土壌が形成されていたから、橋下が出てこられた(で、たかじん登場の地ならしをしたのが上岡龍太郎か)。
『殉愛』は生前、たかじんが「本にするなら百田に」と書き残していた。これまたたかじんの地ならしで、百田が勢いづく。来るところまで来た。私がその話芸に夢中になっていたあの楽しい時間は、何だったんだろう。(小長光哲郎)

▼11月も半ばを過ぎ、ふるい落とされた秋ドラマ。残ったのは「信長協奏曲」「きょうは会社休みます。」「ごめんね青春!」。
 うっかりはまりそうになった「Nのために」は同原作者の前のドラマの後味の悪さを思い出し、なんとか離脱成功。おもしろいから苦労しました。原作は有名らしい「すべてがFになる」はどうしたらそうなる! という位のぐだぐだ感であきらめ。演出のせい?
 前クールの「昼顔?平日午後3時の恋人たち?」でよろめき、話題の“壁ドン”に憧れる視聴者は、“こじらせ”綾瀬はるかに、自分を脳内変換中と思われるが、私にはこれがどうもうまくいかない。“こじらせ”損ねた身としては、むしろしっかり打算して、がつがつアピール、恋の戦場で奮闘中の瞳(仲里依紗)ちゃんを応援中。1話めの“こじらせ女子”を評して“傲慢”と断じた瞳ちゃんの台詞には私同様共感者多数の模様。
 ちなみに「ごめんね青春!」は“壁ドン”5連発!(志水邦江)