週刊金曜日 編集後記

1026号

▼今週号では「日本の建国神話を考える」特集を組んだが、私たちクリスチャンは、2月11日を「信教の自由を守る日」としている。
 1967年に、2月11日を「建国記念の日」として国民の祝日と制定することが紀元節、ひいては戦前の天皇制の復活につながるとキリスト教界が反対の意思を表して位置づけたもの。太平洋戦争中、教会は自分たちの信じる神ではなく国家神道の神、天皇を崇拝するように強要され、戦争に加担したことへの反省があるからだ。
 2007年の米議会では初のイスラム教徒の議員(キース・エリソン)が誕生し、コーランを使って宣誓式が行なわれた。議員は「多様性こそがこの国の強さだ。あらゆる宗教と文化の人たちがいるのはすばらしいことだ」とコメント。信教の自由を守ることは、他者の信仰の自由も大切にすることだ。
 少数者の自由が大切にされる多様な社会を形成していれば、「イスラム国」のようなものは出現しなかったのではないか。ニュースに接するたびに思う。(吉田亮子)

▼アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に、ローラ・ポイトラス監督の『シティズンフォー』が候補となった。NSA(米国家安全保障局)の大量情報収集を暴露した、エドワード・スノーデン氏を追ったドキュメンタリーだ。
 スノーデン氏の暴露した膨大な文書から先月下旬、『ル・モンド』紙等が記事を出した。NSAが、インターネットのアーキテクチュアである、DNS(ドメイン・ネーム・システム。数字で構成されたIPアドレスに対応した名前をつけること)に、MORECOWBELLというスパイウェアを仕掛けている。米国がインターネットの根幹を握り、そこで得た情報を操作して、対象の弱い部分を攻撃するという。インターネットは、米国が支配する世界となった。
 それに対する代案がハッカー達から提案されている。「インターネットは検閲をダメージと解釈し、迂回する」(電子フロンティア財団、ジョン・ギルモア氏)の言葉通りに、自由を守るための攻防が続くだろう。(樋口惠)

▼2月1日、「後藤健二さんら人質殺害を受けての緊急声明」が日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)から発表された。
〈なぜこのような事件が起き、そして繰り返されるのか、「報復」は憎しみと対立を煽るばかりです。暴力による負の連鎖を断ち切るために、原因を追求し、私たちは賢明な平和的手段で解決することを訴えます。〉
 甘すぎるという批判も引き受けた上で、個人として支持します。
 先日、荻窪駅前にあった「ブックセンター荻窪」が閉店した。隣は大規模新古書店の「ブックオフ」。やはり影響は大きかったのだろうか。昨年7月、吉祥寺駅の公園口を出てすぐの路面店「ブックスいずみ」も姿を消した。両店とも雑誌やコミックの新刊など普段使いの本の買い物や待ち合わせに重宝な「街の本屋」だった。
 グローバリズムの近代化は街を殺す。この「まやかし」に固められた世界の行きつく先にあるものは、ただの「空虚」なのかもしれない。(本田政昭)

▼尾籠な話で恐縮だが、ある日、連れ合いが一晩中何度もトイレに駆け込んでいた。お腹を下したそうだ。翌日は私も昼食後に駆け込むことに。前日食べた焼豚がどうやら傷んでいたのでは、というのが私たちの見解。発症の時間差は残念ながら彼女との年齢差であろう。「同じ釜の飯を食う」は、親しい間柄のことを表現しているが、私たちは体現してしまった。皆様、寒いから大丈夫と油断めされるな、食中毒にご注意を。
 食あたり夫婦のようにゆるくない夫婦のドラマが「○○妻」。遊川和彦脚本なので、普段無表情な主人公ひかりは「家政婦のミタ」をほうふつさせる。ひかりは夫を支える献身的な妻だが、まるで賃貸契約のように三年ごとの契約を望む。反発した夫は入籍しようとひかりを説得するが……。彼女が契約にこだわるのは、つらい過去があったためらしい。それは何なのか。あまりにも奔放すぎる母親も絡んでいるのか。意味深な「○○妻」は「契約妻」ってこと? 謎解きが待ち遠しい。(原口広矢)