1030号
2015年03月06日
▼〈「花は咲く」では語れない今のフクシマを歌う〉と題されたイベントが3月2日、東京・参議院議員会館で開かれ、山形県長井市を拠点とするグループ「影法師」(URL http://www.kageboushi.jp/)が「花は咲けども」を歌った。
〈異郷に追われた人のことなど/知ったことかと浮かれる東京/己の電気が招いた悲惨に/痛める胸さえ持ち合わせぬか〉〈花は咲けども花は咲けども/春をよろこぶ人はなし/毒を吐き出す土の上/うらめし、くやしと花は散る〉
メンバーの遠藤孝太郎さんは「高い放射線量に帰還を阻まれている福島の人たちの苦悩をよそに、安倍晋三首相は原発の再稼働へと大きく舵を切った。安倍首相の立ち位置は福島の対極だ。永田町に住んでいると、福島が見えなくなるのでしょうか。福島のような悲劇を再び引き起こさないよう、原発は動かしてほしくないという多くの国民の声が、耳に届かなくなるのでしょうか」と語っている。
筆舌に尽くしがたい苦難や悲しみを背負った人たちの思いを伝えていかねばならないと、あらためて心に刻み直した。(伊田浩之)
▼「一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む」という箴言は、18世紀の英国の聖職者が残したらしいが、現在も傾聴に値する。個人や徒党の殺害と異なり、国家が「百万」単位の虐殺に手を染めても「犯罪」とはされず、「国際世論」とやらもそれを前にすると即、思考停止状態になる。中東で「カリフ制」がどうのと唱えている徒党は斬首で悪名高いが、殺害者数は万にまで及ぶまい。チョムスキーによると米国が第二次世界大戦以降に虐殺した数は6000万人というから、比較を絶する。加えて近年、彼の国はアフガニスタンやイラクで、核に次ぐ破壊力で一挙に人間を焼き尽くす燃料気化爆弾や全身に裂傷を負わせるクラスター爆弾、そして放射能被害をまき散らす劣化ウラン弾等々、斬首どころではない桁外れの残虐兵器で無数の非戦闘員を殺し尽くしてきた。自称「イスラム」の黒装束連中による「テロ」への憤りのせめて1割程度なりとも、米国に向けたらどうだ。この稀代の犯罪国家は、また同じ悪事をやらかす気なのだから。(成澤宗男)
▼日々のニュースで、子どもたちをめぐる悲惨な事件が続く。13歳の少年が犠牲になった川崎の事件の被疑者は、未成年の少年たち。これを契機に少年法のさらなる厳罰化が叫ばれ、道徳教育の強化がいわれるのだろう。だが、大人がやるべきことは、ほかにあるように思えてならない。
複雑な家庭環境で虐待を受けた高校生を励まそうとした教員が、生徒に出したメールに不適切な表現が含まれていたなどの理由で東京都教育委員会が懲戒免職にした案件は、本誌1月30日号で報じた通りだ。裁判所が執行停止決定を下したわけだが、都教委のその後の対応は常軌を逸している。
本人の職場復帰を認めないばかりか、支援した同僚に次々と異動を命じたからだ。なかには担任途中の教員もいたり、異動要綱違反さえもあった。また、再任用の教員は不採用になった。
さらにその高校で導入見送りとなった「土曜授業」を蒸し返し、(来月からの!)実施を迫る。教育者の所行というより権力を持つ者の嫌がらせにしか見えない。(小林和子)
▼長年の中島みゆきファンだった。ドラマ「マッサン」の主題歌のように高らかに愛を歌い上げる曲も好きだが、ボロボロに傷ついてるのに、なんも言えないでいる人の身になりきって歌う曲に、冷えた肩をあたためてもらったりした。
4年ほど前に帰郷したとき、そのみゆきさんの曲「糸」が関西電力の原発CMに使われているのを見て愕然とした。NHK紅白に出演したときに黒部ダムからの中継を助けてもらった「ご恩返し」という説もあるが、「安全・安心・安定」という当時の原発CMの定番に、「ふれあい」を連想させる歌詞が巧みに組み合わされてCM効果は十分。その後3・11が起きたこともあり、彼女の歌は聴く気も歌う気もしなくなった。
ところが最近、最愛の人を亡くした身近な人に接しているうちに、早世したお父さんを歌ったという「雪」の旋律が頭の中で鳴り響き、無性に聴きたくなった。原発のPRに協力したことを忘れることはできないけれど、いい歌はやはりいい。家事の合間に聴いたり、口ずさんだりしている。(神原由美)