週刊金曜日 編集後記

1031号

▼今春、恩師である服部孝章教授が定年となるため、先週末にゼミのOB・OGらが集まり、記念講演会が開催された。衰退するジャーナリズムに向けられた恩師の喝が敗戦70年の年に発せられたのも偶然ではないだろう。服部先生は「今は議論ができなくなっている社会だ」と語っていた。
 そんな中、3月より評論家の寺島実郎さんが運営する寺島文庫と協力して、『週刊金曜日』主催の勉強会を開催する。名付けて「金曜日文庫」。初回は、3月27日(金)18時開場、18時30分?20時予定で、場所は寺島文庫(東京都千代田区九段北1-9-17 寺島文庫ビル1階)で行なう。フリージャーナリストの安田純平さんをお招きし、弊誌編集委員の佐高信が聞き手となり、「テロリストとは誰か?」をテーマに議論する。参加費は2000円で、先着30人、要申し込み。申し込み先はFAX 03-3221-8522、またはMail book@kinyobi.co.jpまで。申し込み件名は「金曜日文庫申し込み」でお願いします。(赤岩友香)

▼欧州からIS(「イスラム国」)に参加する若者が急増しているという。先月にはイギリスの15歳?16歳の女性3人がSNSを通じてIS側とつながり、シリアに赴いた。ロンドンの学校に通っていたようだが、家族に「臨時の授業に行く」と告げ、民間機でトルコに渡り、シリアへ入国――。
 病院の待合室でこんな新聞記事を読んでいたら、名前を呼ばれたので診察室に入った。目が腫れ、鼻水も垂れ流し。くしゃみもとまらない。毎年のように花粉症に苦しめられる軟弱な体質とたるんだ身体では、とてもじゃないが、IS戦闘員のように黒服を身にまとい、銃を持ってほふく前進したり、輪っかの中に頭から飛び込んだりといった激しい軍事教練はできない。若者たちはISの何に惹かれているのだろう。
 医者は花粉症の薬リストを上から下へと眺め、こちらの顔を見ることもなく、大量の薬を処方してきた。あれから目も鼻もそれなりに楽にはなったけれど、いまいちスッキリしていない。(野中大樹)  

▼野坂昭如さんの隔週連載「俺の舟唄」は、妻である暘子さんとの二人三脚で成り立っている。お二人の辛抱強い「創作過程」があり、口述筆記原稿がファクスで編集部に送られてくる。これまで締切を過ぎることは一度もない。
 村松友視さんのエッセイの中で、昔、中央公論社の編集者だった頃、野坂さんの自宅に原稿をもらいに行った時のことが書かれてある。当時、原稿はすべて作家から直接手渡された。
 夜中、野坂宅のインターフォンを押すと昭如さんが現れ「すみません。あと2時間だけ待ってください。そしてこのインターフォンをまた押してください」と約束。2時間後、野坂宅を訪れた村松さんは呆然として立ち尽くす。インターフォンが門扉から取り外されている。これでは、押せない! この「労力」が、なぜ執筆に向かわないのか。村松青年は人生(人間)の矛盾に深く悩むのだった。
 そんな逸話があるだけに、創作パートナーとしての暘子さんに感謝する日々が続く。(土井伸一郎)

▼市立保育園にて毎年恒例らしい、「今年のインフルエンザについてのアンケート」と昨年のアンケート結果報告が配られた。アンケートは無記名ではあるが月齢と性別の欄があり、またクラスごとに提出チェック表があって、提出しないと催促される方式なので、だいたい誰が書いたかわかる仕組み。
 まあ正直に書こうと思うのだが、項目のひとつに、インフルエンザワクチンの効果をどう考えているかという質問があり、選択肢には、「効果はないと思う」「その他」といったものがない。何かしらの効果があると考えているのが前提の作りになっている。選べない……余白に理由を書いたりしたら、来年度から保育園にいづらくなったりするのだろうか、とか色々考えてしまう。
 5年以上前、上の子の在園時(同じ市立の他園)には、この昨年のアンケート結果報告の末文のように「すべての園児に対し、ワクチンを2回接種することを強くお勧め」されることはなかった。(佐藤恵)