1032号
2015年03月20日
▼「これでまた日本人の宗教に対する誤解が強まるわ」。地下鉄サリン事件を実行したのはオウム真理教だと報道されたときの母の第一声は今も忘れられない。
中学生だった私は、「オウム真理教って宗教なの?」と思った。オウムはカルトで、私の信じている宗教は新教と併せれば世界では約3割もの人が信仰している。だから、オウムと一緒にされることはないとタカを括っていた。
それから20年。オウムの事件が直接的な原因かはわからないけれど、宗教に無理解なこの国の人々が自分に向ける振る舞いや言動で、筆舌に尽くしがたい思いをしたこともある。
一方、オウムの元信者と触れ合う中で、私自身のオウムに対する見方も変化した。中村文則さんや森達也さんと同じく、今では私もオウム真理教は宗教だと思っている。では、なぜそれが多くの人を傷つける宗教になってしまったのか。集団が持つ負の普遍性から目を逸らさず、これからも追究しつづけていきたい。(赤岩友香)
▼ローラ・ポイトラス氏のエドワード・スノーデン氏に関する『シティズンフォー』が、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した。授賞式の壇上に、スノーデン氏のガールフレンド、リンゼイ・ミルズ氏がポイトラス氏らと一緒に立った。勇気ある女性だ。
あるサイトで『シティズンフォー』を見た。滞在していた香港のホテルでのスノーデン氏は、落ち着いた雰囲気。部屋のテーブルに、ラップトップと一緒に、10代のハッカーを主人公にした、ヤングアダルト小説『ホームランド』(コリイ・ドクトロウ作、日本では前作『リトルブラザー』が翻訳)があった。ロシアの自宅では、リンゼイ・ミルズ氏とのツーショット。ロシアで二人は一緒に暮らしている。最後に、スノーデン氏も驚くような、新たな内部告発者の存在が示される。
オリバー・ストーン監督の映画『スノーデン』は配役も決まり、今年撮影に入る。日本での配給も決まっている。『シティズンフォー』も上映してほしい。(樋口惠)
▼3月13日(始発駅基準)をもって寝台特急「北斗星」は、北海道新幹線開業に向けた青函トンネルの夜間作業間合いの拡大や車両の老朽化に伴い、定期運転を取り止めた。4月2日(上野発)からは臨時列車として8月22日(札幌発最終運転日)まで運行される。最後に車窓を眺めながら北海道までの距離を体感してみたいものだ。
14日、北陸新幹線が開業した。各駅で開業式が行なわれ祝賀ムードが盛り上がっているが、並行在来線の第三セクターへの移管で地元にのしかかる維持費用や新たに発生する地域格差など課題は多い。便利さと引き替えに切り捨てられていくもの、失われていくものがたくさんある。
「早くて、便利」の先には何があるのだろうか。この国の多くの人はなぜ楽しそうじゃないのだろうか。「金銭換算できない価値」について考え抜くことが、今、改めて問われている気がする。
〈文明の速度が、蝶を滅ぼす。〉若い頃から何度もめくっている本の一節を想う。(本田政昭)
▼年度末だ。定期購読に関わる仕事では、大量更新期に次いで忙しい時期でもある。まして今年は市民意見広告運動の同封チラシで多くの方々のお申し込みをいただき、格別の忙しさとなった、感謝。
公立図書館などの団体の定期購読は、予算が通れば契約更新となる。すると手続き書類の提出が求められる。見積書、請求書に加えて、自治体によっては請書を作成することもある。独自の書式に記入しなければならないこともあり、担当者との確認は欠かせない。前年度の領収書の発行依頼も多い。
そして格段に増えるのが送付先の住所変更である。定期購読の配送手配は毎週月曜日に行なわれる。月曜日が祭日の場合は前週の金曜日になる。従って、4月3日号から新居に配送ご希望なら、3月30日の午前中までにご連絡ください。ヤマトメール便は郵便のように転送できません。慌ただしいとは存じますが、よろしくお願い申し上げます。余談だが、私はリヤカーで引っ越したことがある。今や懐かしい思い出だ。(原口広矢)