1033号
2015年03月27日
▼7割の国民が「民意が反映されていない」と感じ、「悪い方向に向かっている」と思う分野で「景気」と回答した人が3割を超えた。内閣府の「社会意識に関する世論調査」(3月21日発表)で浮き彫りになったのは、安倍政権の独断とアベノミクスの失敗だ。昨年4月に消費税を8%にアップし庶民の暮らしに打撃を与えながら、安倍政権は2015年度から法人税を下げる。この民意無視の愚策に今週号に登場の富岡幸雄・中央大学名誉教授がNOを突きつける。
税制と税務に携わり70年。戦後の日本税制の生き字引のような富岡さんをして「許せない」のが、大企業がまともに税金を払っていないことだ。「日本の法人税は高い」(14年時の法定税率38・01%)とされるが、富岡さんの試算では資本金100億円超の大企業の平均負担率は「17・20%」。これが実際に納めている税金(富岡さんの言う「実効税負担率」)だという。法定の半分以下だ。どんなカラクリがあるのか。御年90歳の富岡さんが、岩本沙弓さんの質問に答える形でネット上の批判にも反論しながら気炎を上げる。次号までの連載。必読だ。(片岡伸行)
▼ドラマ「問題のあるレストラン」は、セクハラをはじめ、ハラスメント満載の会社男たちに対抗して、女たちが起業。全員で働き甲斐のある職場を創る爽快な話だった。
『生きるための経済学』(NHKブックス)などの著書で、社会を覆うハラスメントが、生きること、働くことの喜びを奪っていると語っている安冨歩さん。本号インタビューで女装して現れたとき、違和感のない着こなしが鮮やかだった。女装は、自らもハラスメントに悩まされてきた安冨さんの、“魂”解放の一環と聞くが、行動も発言もユニークそのものだけに、誤解されることも多いらしく、「最近は大学(東大)であまり講義させてもらえない」と苦笑していた。
本号で、ピケティを「読まずに語る」ことに、乱暴と感じる人もいるだろう。批判に納得できるかどうかは読者の判断に任せるしかないが、不平等の解消、富の再分配を、権力に頼ってはならないとする指摘には共感した。労働による経済活動の喜びを「マネジメント能力のある経営者」に求めることに異論の向きもあろうが、「問題?」は、そのヒントにもなるドラマだった気がする。(山村清二)
▼ドイツがなぜ脱原発の決断をしたのか、とメルケル首相にその理由を説明されてもまるで馬耳東風。また、仙台で開かれた国連世界防災会議での主催国挨拶でも、いまも12万人が避難生活を強いられている福島第一原発のことにはほぼ言及しなかったという安倍首相。福島原発事故の、あの貴重な教訓を生かすどころか、原発の再稼働をもくろむなんて! 脱原発こそ最大の防災ではないのか。
今月3・11直後、TBSテレビ「情熱大陸」に、防災プロデューサー・NPO法人プラス・アーツの永田宏和さんが取り上げられた。阪神・淡路大震災の後、実体験を教訓として次世代に伝えられる神戸にしかできない防災を、と神戸市から依頼され企画した楽しさをミックスした子ども向け防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」。「もしもの時の特別な備えから、いつもの生活に自然に存在する防災」教育を目指すという。その防災を学んだ親子は20万人に達している。せめて、子どもたちに襲いかかる防ぎようのない災害から、原発災害だけは首相の力で取り除いてほしい。(柳百合子)
▼とうとう与党議員の口から「八紘一宇」発言が飛び出した。三原じゅん子参議院議員が予算委員会でグローバル資本主義の租税回避問題について質問したなかでの発言とのこと。一見もっともなことを言っているようだが、その根本に「八紘一宇」があるとすれば、まったく同意できるものではない。こんなばかげた話は自民党の議員だけでたくさんだが、ここにきて民主党の馬淵澄夫議員も「三原議員『八紘一宇』発言に違和感なし。言葉だけをあげつらっていては、事の本質が見えなくなる」などと書いている。「八紘一宇の精神」とやらにどっぷり漬かった人には批判が“あげつらい”に聞こえるらしい。『日本書紀』の架空の人物をもって模範としようなどというのは噴飯ものだが、「神武紀」の該当部分は全く笑えない。神武の発言は、征服の過程で多くのまつろわぬ民を殺してきた、という言葉から始まっている。従わない人々を殺戮してつくられる家は、幸せの象徴でもなんでもない単なるディストピアだ。それは大日本帝国そのものであることに思いをいたすべきだろう。(原田成人)