週刊金曜日 編集後記

1035号

▼石坂啓本誌編集委員原作のテレビドラマ「アイムホーム」が4月16日(木)から始まります。テレビ朝日系列局などで視聴できるはず。木村拓哉や上戸彩などの豪華キャストも話題を呼んでいます。
 その石坂さんの最新作『竜宮家族』(小学館)が3月に出ました。こちらは2013年?15年の連載です。掲載誌を毎回読んでいましたが、通読すると迫力はさらに増します。詳しくは読んでいただくしかありませんが、東日本大震災の衝撃や、その後の社会に対する石坂さん一流の“批評”になっていると感じます。
 大震災後、石坂さんはテレビのコメンテーターなどを降り、漫画や本誌の執筆に力を込めるようになりました。危機の時こそ、自らの持ち場でモノを作ることが重要だと考えているのでしょう。私もさらに仕事に励みたいと思います。
 さて『アイムホーム』(上下巻)『竜宮家族』を各10人に贈りたいと石坂さんが言っています。希望者は、ハガキに住所・氏名・希望作品を書いて、小誌編集部「石坂啓」プレゼント係まで。発送をもって当選とします。(伊田浩之)

▼「公然わいせつって一体なんだ??!!」「そもそもハダカが犯罪って!」「じゃあ、この世の赤ちゃんはみな、公然わいせつ罪で生まれてくるのか??!!」「いちいち気にする、お前の考えのほうがわいせつだわ―――!!」
『週刊ビッグコミックスピリッツ』4月13日号の漫画「オケラのつばさ」が面白い。神様が訳あって人間(女性)になり、路上で全裸でいたところを警察に捕まり、叫んだ台詞がこれ。
 名前のインパクトで、誤解されることがあるが、ろくでなし子さんは、公権力に挑むとか、それに抗うつもりで作品を発表しているわけではない。「オケラのつばさ」の神様同様、自然体に生きて、純真に自分自身を表現しただけだ。
 わいせつの定義は「徒に性欲を刺激し、正常な羞恥心を害して善良な性的道徳観念に反すること」。
 憲法改悪、集団的自衛権の安保法制など、「徒に戦意を高揚させ、正常な羞恥心を持たず、善良な市民を巻き込もうする」どこかの破廉恥極まりない政権のほうが、よほど“わいせつ”な気がするのだが……。(尹史承)

▼最近、アナログレコードが人気だとか。私の自宅にもレコードの山があり、ただ諸々の事情でプレーヤーはなく、長らく「宝の山」だったのだが、先日やっと手に入れた。失われた時間を取り戻すごとく猛然と聴き、はしゃいでいると、小誌筆者の藤田正さんから「高いけど、ディスク・ユニオンからモダン・ジャズのLP(特別生産シリーズ)がでてますよ」というお祝い情報(?)が。「ハマると、やばいかも(笑)」とも。たしかに。散財の予感が……。
 そんなときに、村上春樹の『小澤征爾さんと、音楽について話をする』を読んだ。驚いたのが、小澤さんが、音楽そのものをきちんと聴くのではなく、やたらいいステレオ機材を揃えたり、レコード収集したりすることへの「嫌悪感」を露わにしていたこと。彼のような人にとって真の音楽とは、パッケージされた商品ではなく、その場で奏でられ、共有されるものなのだ。いいレコードを聴く喜びを噛みしめつつ、閉じこもらず、「収集」はほどほどに。ライブ通い第一、を肝に銘じて。(小長光哲郎)

▼昨年末、逮捕・起訴された漫画家・ろくでなし子さんの初公判は4月15日に行なわれる。
 詳細は次ページに記されているが、初公判の翌日16日に、「ワイセツって何ですか」と題し、報告シンポジウムを開催する。当初は開催場所を東京ウィメンズプラザにする予定だった。シンポジウムの内容を伝えたところ、「係争中の案件であること」「マスコミが騒ぎ立てたり警察が介入することが想像できるため、他の施設利用者に迷惑をかける可能性があること」を理由に「使用承認に時間を要する」と書面にて連絡がきた。
 本誌編集部から書面について幾つか質問したところ、東京ウィメンズプラザから電話があり、「ろくでなし子さんの事件が注目を集めていることに加え、東京ウィメンズプラザは東京都配偶者暴力相談支援センターの機能も担っており、性暴力の被害者に配慮し、女性器を扱うろくでなし子さんに施設の利用はできない」旨を伝えられた。ろくでなし子さんの作品を見て判断したのか。二転三転する理由も不可解だ。(赤岩友香)