週刊金曜日 編集後記

1056号

▼「(あなたの)ブログが有害サイトであるとの申告を受け、利用停止の措置を取らせていただきます」。2009年のある日、韓国最大のポータルサイト「NAVER」のメールにこんな通知が来た。驚いて調べてみると、私のIDを使い、ブログ型のアダルトサイトが3つも運用されていた。こんな「乗っ取り」事件や「なりすまし」被害は、韓国では頻繁にある話だ。韓国では、あらゆる場面で「住民登録番号」(在韓外国人は「外国人登録番号」)という個人識別番号が必要とされる。公共機関や企業は個人番号などの情報流出事件を幾度も起こしており、近年は企業らが個人番号を取得する際の規制が強化される傾向にある韓国。
 一方で、日本は「マイナンバー」によって個人情報開放の時代に入る。番号通知は目前だ。そんな中、10月3日(土)に「ストップ! マイナンバー(共通番号)10月通知 全国集会&デモ」が東京・渋谷で行なわれるという。問い合わせはTEL・090-2302-4908だ。 (渡部睦美)

▼「大阪都構想」の投票で敗れ、「悔いのない政治家としての7年半だった」と笑顔で引退を宣言した橋下徹大阪市長。悔いがないどころか、「維新の党」を分裂させるなど、予想どおり選挙民をコケにするような活動を続けている。12月で引退とまだ言っているようだが、とても信じられない。
 小誌の中島岳志編集委員がWEBの『マガジン9』で、橋下氏の著書『図説・心理戦で絶対に負けない交渉術』をもとに、ご自身の体験も交えて橋下氏の「言論テクニック」を解剖している。「仮想の利益を創出することによって、相手に要求を飲ませる」とか「ありえない比喩」、「前言撤回」、「ふっかけ」とか、橋下氏の手口の構造がよくわかる。安倍内閣のポスト打診の話もあるようだが、この人と損得抜きでつきあい続ける人がいるとは、私には思えない。
 いずれにしても、大阪市長を辞めていただくのは元大阪市民としては、ありがたい。 (神原由美)

▼「物理ちゅうのはウンウン唸って考えて、面倒がらず手を動かして計算せな、自分のものにならんのよ」。山本義隆さんのお名前を知ったのは、駿台予備学校に通っていたとき。講師紹介にある冒頭の言葉や写真の雰囲気から、物理には縁遠い私は「恐い......」という印象を勝手に抱いていた。
 それから十数年後、弊社から山本さんの『私の1960年代』を刊行することになり、ご本人とお会いしたが、とても優しい方だった。学生運動を経験した諸先輩方にとって、山本さんは「神様」のような存在。私が担当していいの? と最初は気後れしたが、「学生運動のことを知らない若い人にも読んでほしい」という山本さんの思いもあり、拙い疑問をぶつけさせていただいた。本書では、近代日本の科学史も書かれている。
 なお、本書の帯コピーは著者である山本さんご自身がつけられた。 9月下旬の発売予定。ぜひお読みください。 (赤岩友香)