週刊金曜日 編集後記

1073号

▼米軍普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市の市長選で1月24日、辺野古新基地建設を進める自民・公明両党が推薦した佐喜眞淳氏が、新基地反対の志村恵一郎氏を破って再選を果たしたことを受け、各地方紙は社説を掲げた。いくつかを紹介する。選挙戦が最後までもつれ志村氏も4割を超す票を集めたことを受け、〈辺野古移設が宜野湾市民に「信任」されたと考えるのは早計だ。佐喜真陣営は選挙戦で普天間飛行場の固定化回避には言及したものの、辺野古移設推進を直接訴えたわけではないからだ〉(『東京新聞』)、〈政府は選挙結果を受けて辺野古移設を進める構えだが、民意を見誤ってはならない。志村氏に対する投票の重みを受け止め、計画を再考する契機とするべきだ〉(『北海道新聞』)、〈ごり押しで工事を進めれば、安倍政権と沖縄の溝はさらに深まろう〉(『京都新聞』)。地方紙の敏感な反応は、安倍晋三政権が、中央と地方の対等をうたう地方自治を破壊しているとの危機感からだ。 (伊田浩之)

▼安倍晋三は憲法が「占領時代」に作られたから気に入らない風で、稲田朋美も東京裁判を認めたくない様子がありありだ。他の先進国に類例を見ない対米追従の輩が、今頃になってGHQへの恨み節を口にするとは、思考力に変調をきたしているのか。米国が占領したおかげで天皇・裕仁は東京裁判で追訴を免れ、自民党結党に合流した岸信介や賀屋興宣、児玉誉士夫といった戦犯人脈も返り咲けた。安倍が昨年の訪米で示した卑屈極まる幇間ぶりこそ、この連中に相応しいのだ。稲田は「A級戦犯は犯罪人だと言い切ることには抵抗がある」とも放言したそうだが、それはそうだろう。「A級戦犯(容疑者)」とその一味らが結党したのが自民党だから、自分たちも「犯罪人」の片割れに連なるからだ。だが、日米安保条約に象徴されるように命乞いの証としてこの国ごと現宗主国に売り渡した「A級戦犯(容疑者)」と同様、TPPで植民地・属国化を進めている安倍や稲田も、「犯罪人」と指弾されて抗弁はできまい。 (成澤宗男)

▼特集では、安倍晋三政権の社会保障政策に絞ったため、「とりあえず個々人はどうすればよいか」まではあまり触れられなかった。藤田孝典さんによれば、「老後」への対応という点では、まずは、自身の年金がどうなっているかを調べることが大事だが、これをしていない人が意外に多いという。
 藤田さんが、個人的対応としてさらに強調するのが「受援力」だ。これは「救済を求める声をあげたり、援助を受ける権利を行使したりする力」で、そのために大切なのは、「(余計な)プライドを捨てること」だという。年配のひとほど、他人の支援を受けることを「プライドにかかわる」と考える結果、介護にしてもギリギリまでだれにも相談せず、かえって追いつめられがちとのこと。「ひとは元々依存しあっています。水を飲むのに川から汲まずとも水道から飲める。社会保障も同じです。使えるサービスは何でも使うことです」という言葉は、10年以上、現場で支援活動をしているひとの言葉だけに重く受け止めたい。 (山村清二)

▼ベッキーと文春の"蜜月"やらスマップの"女帝"への謝罪やらが話題になっているが、「緊急事態条項」という名の強権(赤紙)を発動されたら、それどころではない。
 安倍政権が参院選後に狙う改憲の目玉とされる同条項は、内閣総理大臣が緊急事態と判断した場合、"国会を通さずに法律と同一の効力を有する政令を制定でき、何人もそれに従わなくてはならない"という独裁国家も真っ青な内容だ。戦争をなくすどころか、戦争をするためにどうするかで動く"ゲスの政権"ここに極まれりだ。
 今、止めるべきは、誰かの不倫や解散ではなく、この政権の暴走だろう。そもそも米国に従うだけで、戦争の"リアル"も知らない政権に緊急事態を判断できまい。原発災害時、汚染水は管理下にあると、ウソぶいたのは記憶に新しい。
 過日、実際に戦争を体験した若者、鵜澤佳史さんの『僕がイスラム戦士になってシリアで戦ったわけ』(金曜日)を発売した。戦争をさせないために私達は何を考え、何をするべきなのか。そのヒントが本書にはある。 (尹史承)