週刊金曜日 編集後記

1087号

▼先月初め、ある集まりの席で台湾の「地震予測研究所」の新聞記事のコピーを手に、地震への不安を訴える人がいた。過去に地震が発生した時の電磁波の波形と比較して地震の予知を研究し、そこから大量に出される予測が的中する確率が高いという記事。確かに、今年に入って実際に起きた日本の地震と研究所の予測が、規模や場所のずれは確実にあるものの「一致?」と、読めば読めなくもなく、読む側に不安が伝わってくる。「現代の科学では時間や場所を具体的に特定する地震予知は確立されていません」と「NHK生活・防災」が公式ツイッター(4月20日)で、地震予知情報に不安を訴える質問に対し注意を促していたが、あやふやな情報には気を付けたい。しかし熊本地震のあとも頻発する余震のなか川内原発のことも気になる。
 政府は「現状で安全上問題はない」と高を括っているが、川内原発の停止を求める署名が6日には12万筆を超えたという。(柳百合子)

▼熊本大地震で被災された熊本県のみなさまに本誌の配達状況確認のため、地震直後にお手紙をお送りしました。余震の続く状況のなか、多くの方からご返信いただきました。ありがとうございました。
 お寄せいただいたメッセージの中には趣旨として「家に住めるかわからないが、日中は帰って片付けをしている」という被害状況についてや「震源が拡散しているのに原発を止めない。意地で稼働させているとしか思えない」という原発への不安、「国会で自衛隊のあり方(災害支援力の強化)の話が出ない」などのご意見、「緊急事態条項など無用である事を実感しました。自衛隊には助けられましたけど」というものなどもありました。また避難所で福岡の居酒屋さんのボランティアが食材の有効活用などで活躍しているという、当事者でしかわからない情報もお伝えいただいています。編集部でも参考になりました。引き続きご意見ご要望承りますので、業務部までお寄せください。(原田成人)

▼元チェルノブイリ原発事故処理作業員のお二人が本誌インタビューの後(4月23日号)、ひょんなことから旧ソ連圏の人気キャラクター・チェブラーシカのテーマソングを歌いだしたのには驚いた。
 南国からオレンジの箱に入ってやってきた大きな耳と大きな目を持った正体不明のちっちゃな生き物。今年はウスペンスキーによってかのキャラクターが生み出されて50年にあたる。なぜ、かくも長い間、人々から愛されてきたのか。事情に詳しい古是三春さんは戦争の爪痕を指摘する。独ソ戦では多くの人々が大事な人を失った。戦後も癒えない傷を抱えて生きていく中、独りぼっちのチェブラーシカがワニのゲーナら友を得て生きていく姿に、自分自身を重ねて支持したのでは、というのだ。
 日本では短編映画が東北から公開されている。チョコレート菓子「小枝」のキャラクターにも登用されているが、なんとそこには大切な友人の姿がない!(小林和子)

▼「映画監督という枠に収まりたくない」。以前、園子温監督は、ろくでなし子さんとの対談時、自身のアトリエで絵を描きながらそう語った。「映画界の異端児」と言われている園監督だが映画という一つの世界だけに満足していない。そんな園監督を一作品で描いたドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』(監督は大島新さん)が5月14日から公開される。
 でも、そもそも「異端」とは何か。映画とは何か。そして、芸術とは何なのか――。園監督はこれらの思いを画面にぶつけていく。
 原色の塊のような園監督だが、映画ではふいに淡い色を醸し出す場面がある。公私ともにパートナーである神楽坂恵さんと自宅で過ごしているときだ。劇中の神楽坂さんのインタビューも印象的。園監督はまだまだ私たちに見せない色を隠し持っている。監督自身の最新作『ひそひそ星』(同日公開)はモノトーン基調。本作と併せて観るのがオススメだ。(赤岩友香)