週刊金曜日 編集後記

1090号

▼本誌5月27日号4頁の記事「刑訴法・盗聴法改悪法案が成立」に、民進党の有田芳生参院議員がネット上で批判している。記事中の「ヘイト・スピーチ規制法案を通す見返りに、本法案に賛成するという取引があったからではないか」との見立ては「事実無根」。また、足立昌勝氏のコメント「『今度の改選でぜひ落選してもらいたい』」をそのまま掲載したのは、「特定個人の狙い撃ち」を編集部が「肯定した」としています。
 ヘイト・スピーチ規制法成立に尽力された有田氏には編集部としても敬意を抱いており、「金曜アンテナ」担当者として当該コメントの掲載には慎重であるべきでした。刑訴法・盗聴法改悪法案については、反対していた民進党がなぜ直前で法案に賛成したのかが明らかでなく、筆者・林克明氏の見立てに沿ったものですが、編集部の責任で関係議員への追加取材もした上で掲載すべきでした。
 関係者にお詫び申し上げるとともに、今後、事実関係を精査していきたいと考えます。(山村清二)

▼いつも永田町の動向をレクチャーしてくれる知人が、先日、衆参同日選をめぐる情報に右往左往する私にこう指南してくれた。
「政治家の発言に振り回されていてはダメ。ロジック(論理)で考えないと」
 知人が言うには、解散総選挙をやるとなれば自民党は全候補者の選挙資金として数十億円ものカネを用意しなければならない。そのカネはどうやって工面するか。銀行から借りるのだ。現状、自民党が銀行から数十億ものカネを借りた形跡はない。つまり――。
 ほか、いくつかのロジックをもとに知人は5月中旬には「同日選なし」の見立てを示していた。本誌校了日である火曜日(5月31日)現在、解散の気配はない。
 そういえば、今週の特集をつくる過程では「ロジック」というワードを何度もキーボードに打った気がする。印象や情緒に流されそうな場面はぐっとこらえ、情報(事実)と論理を積み上げる。地味で面倒な作業だが、見える世界もぐっと拡がるはずだ。(野中大樹)

▼実に久しぶりに「市民運動案内板」を担当している。ちょっと調べてみたら、この「案内板」は1993年の月刊創刊時からあって、それも雑誌の真ん中あたりに「どうだっ!」って感じで載っていたりする号もあり(要するに号によってバラバラで)それが逆に新鮮だったりする。
 その「市民運動案内板」は995号まで20年続き、今の「きんようびのはらっぱで」に名称変更された。
 このページは電話確認が必要なため、直接情報提供者と話すのだけれど本誌読者の方も多く、ときに誌面感想やお叱り、励まし(たまに感謝)をいただく。直接読者の声を聴けるのでこの「直接交流」は編集者にとってありがたい。
 ちなみに今週号、前ページの6月11日にある「選挙直前! 市民とメディアが民主主義を確立させるには?」は杉並・世田谷読者会が企画した、本誌発行人との「直接交流」の場。私の地元でもあるので自転車こいで行ってみるつもりです。(土井伸一郎)

▼4月末に沖縄で起こった女性遺棄事件は容疑者として元海兵隊員の米軍属の男性が逮捕された。この事件をきいてすぐさま思い起こしたのは、21年前の1995年9月の米軍人による少女暴行事件だった。今回の被害者は20歳。あの事件後に生まれたことに気づいた時、やりきれない気持ちになった。事件の残忍さ、沖縄の基地への怒りには当時高校生で何も知らなかった自分もいろいろと衝撃を受けたが、あの残忍な事件の教訓も沖縄の怒りも今回の事件を防ぐことはできなかった。それはひとえに沖縄に問題を押しつけて恥じない「本土」側の問題だ。他人事のような態度をとる安倍政権の面々だけでなく基地問題を無視した「平和な戦後」像を自明視する人々もまた問われているのではないか。押しつけている者こそが状況に責任を持つべきだろう。
 4月に封入しました「沖縄意見広告」の賛同募集。定期購読者の方には、その報告集会のちらしをこの6月3日号に同封しています。ぜひご覧ください。(原田成人)