週刊金曜日 編集後記

1108号

▼最新シリーズが話題の米国のドラマ、「ウォーキング・デッド」。死者となって人を襲い食う、「ウォーカー」(ゾンビ)が米国全土を覆う、崩壊した世界で生き延びようとする人々の物語だ。米国のゾンビは、元々カリブ海域のアフリカ系の人々が死者にされて使役される奴隷の物語だと言われる。
 1960年代、70年代のロメロ監督の映画は、群れて歩き回る飢えたゾンビが、人間に襲いかかり、噛みついた人間をゾンビにして増殖する、という新しいゾンビを作り出した。人種問題に、消費、伝染する病気の要素を加えた。
 20世紀後半、21世紀のゾンビの物語は、「健康管理も、十分な食料もない世界で、生き延びるために誰でも殺そうとする、心ない動物へと変化する」(アナリー・ニューウィッツ)、人類の未来を描く物語だ。会社で奴隷のように使われ、消費に踊らされ、人を犠牲にする、心をなくした私たちが、すでにゾンビだと思う。(樋口惠)

▼今週号(14ページ~)の編集長インタビューで上西小百合・衆院議員が、芸能事務所・タイタンの社員(当時)が橋下徹・前大阪市長の選挙活動を仕切っていたことに触れている。
 タイタンの代表取締役社長の太田光代さんはツイッターで「憲法九条は、若い日本の人達を守ります」「戦争は反対です!」とつぶやいたり、護憲派と言われている。一方、橋下さんは憲法九条を"改悪"することに意欲的。所属しているタレントが社長と同じ考えである必要はないし、それは社員に対しても同じだろう。そう言ってしまえば、話は終わりなのだが。
 上西議員はツイッターで太田光代さんに「ハッキリ言いますが、橋下徹さんのマネージメントは貴方には無理じゃないですか?」と問いかけた。橋下さんの発言は今でもまるで安倍政権の援護射撃。ネットの議論はかみ合っていないように見受けられたが、今後の動向に注目したい。(赤岩友香)

▼先週号(10月7日号)から「くらしの泉」で幕内秀夫さんによる連載が始まりました。題して「口は災いのもと」。連載を開始するにあたり、テーマや内容を相談するのですが、一番難しいのが、タイトル。私からの提案は、どれもピンとこなかったようで(泣)、最終的に決まったのがこれです。
 幕内さんは、現在の日本の状況を「情報過食症時代」と称しています。あまりにもたくさんの「健康と食(生活)」関連情報があって、もはや「食べ過ぎ」とのこと。言い得て妙ですよね。そういえば、知り合いの編集者が「健康」と「ダイエット」は達成できない永遠のテーマなので出版業界の"鉄板"だと言ってたなぁ......。
 口から食物を取り入れて生命を維持するのがヒトの基本。文字通り、口が「災いのもと」にならないよう、私も深夜の暴飲暴食ぐらいは少し控えようと思います。
 連載は年末まで。是非、お楽しみに。(弓削田理絵)

▼現在本誌の定期購読者数は約1万5000、そのうち2182件が今回お届けしている号で契約更新を迎えます。1993年11月の創刊以来、途切れることなく購読されている読者が多く、今号から11月上旬に契約更新を迎える方が全体の3割以上にあたります。一方、何らかのご事情で購読を継続されない方もおり、分母が大きいだけに部数を一気に減らす時期でもあります。言うまでもありませんが『週刊金曜日』は定期購読者に支えられている雑誌です。引き続きの購読をよろしくお願いいたします。
 さて初の試みですが東京・神田神保町で毎年開催される『第26回神保町ブックフェスティバル』(10月29日・30日)に参加します。両日とも本誌バックナンバーと既刊書籍を廉価販売いたします。なお、申込み締切り後の参加表明だったのでチラシの参加出版社欄に「金曜日」の名前がありません。ご来場の際は小社ワゴンにぜひお立ち寄りください。(町田明穂)