週刊金曜日 編集後記

1115号

▼今週号の特集は、「日本会議」シリーズの3回目です。安倍政権へ多大な影響力を持つ、とされる日本会議。今回は、その思想の根幹となる「歴史認識」について取り上げています。日本の「国柄」「伝統」「民族」を重んじ、「本当の日本の姿を取り戻したい」という日本会議が望むのは、一体いつの時代なのか?「美しい日本の憲法をつくる国民の会」製作のDVD『世界は変わった 日本の憲法は?』で、その歴史観について"論議"する女子会も開催しました。
 今回、紙幅の都合により掲載できなかったのですが、DVDには百地章さん曰く「日本の伝統的な家族」である「サザエさん」が出てきます。でも、「サザエさんはデモとかしちゃうような進歩的な人ですよ」とHさん。磯野家との2世帯同居の「(フグ田家の)マスオさんのご両親はもう亡くなっているという設定なのかな」とはKさん。はたして日本会議が望む理想の家族像なのか......と盛り上がったのでした。(弓削田理絵)

▼スパイものと敬遠してきたジョン・ル・カレを読みふけっている。きっかけはル・カレ原作の映画『誰よりも狙われた男』で、脇役時代から気になっていたフィリップ・シーモア・ホフマンの演技に魅了されたこと。原作を手に取り、今度は緻密な描写と、なによりも全編を貫く深い人間愛に打たれた。
 最新刊の『繊細な真実』(ハヤカワ文庫)や『われらが背きし者』(岩波現代文庫・本誌10月21日号で映画が紹介されている)へと進み、ネットで見つけた米国の独立報道番組「デモクラシー・ナウ!」のインタビュー(2010年)も見た。諜報部員の経験や自著紹介を交えながら冷戦以後を語っており、近年、彼の本が再び読まれている理由がよくわかる。
 その中でル・カレは反戦運動やグローバル化、格差拡大などを取り上げて、特にイラク参戦を決めたブレア元英首相について、「理由を偽って国民を戦争に導くのは政治家として最大の罪。来世はない」と怒っている。安倍首相にも見てほしい。(神原由美)

▼堀越けいにんさん――この夏、堀越さんが立候補した群馬県の参議院選挙は、とっても盛り上がっていた。群馬と言えば保守王国。その地で市民団体の一員だった彼が野党統一候補となり、それを決めたその日から勉強しはじめ、さらに市民1人ひとりが主体的に参加し、選挙が形づくられていったという。感動的であり、本人もまわりもなんだか楽しそうなのだ。
「彼は旗を立ててくれたけど、その旗に向かって私たち1人ひとりが風を送る。みんなが風になって、この日本を変えていきましょう」と応援に駆けつけた女性。堀越さんは残念ながら選挙では勝てなかったけれど、確実に風は吹いた。
 この群馬と長野での野党共闘の記録をまとめたドキュメンタリー映画『選挙が生まれる 長野と群馬の挑戦』(製作/湯本雅典)が完成、17日にレイバーフェスタで上映される(はらっぱ参照)。今後の上映予定やDVDの注文はURL・https://www.facebook.com/senkyoumareru/ URL・http://7colors.org/yumoto/02/0023.htmlまで。(吉田亮子)

▼先週号の矢崎泰久さん「発言2016」で、年末の新宿紀伊國屋ホール公演詳細は「はらっぱ」欄で、とのことでしたが「はらっぱ」が満杯のため、ここでのご案内になりました。またホール担当の方に聞きましたら、残席僅少(11月25日現在)とのことですので完売の場合はお許しください。なお当日券は若干枚発売あります。
 今年で最後となる公演タイトルは「永六輔の伝言」。12月27日18時開演(開場17時半)。東京・新宿紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4階)、料金5000円(全席指定)。電話予約は03・3354・0141(10時~18時半)になります。
 六輔さんの仲間たちが集まっての"歌舞音曲多士歳々飛び入り無限大団円"と銘打つ、暮のお楽しみ。本誌「話の特集」執筆陣、中山千夏、小室等、松元ヒロ、御大矢崎泰久の面々に李政美、オオタスセリの歌と笑いで16年師走を締めくくります。千夏さんと小室さんの『老人と海』が聴ける(と思います)。(土井伸一郎)