週刊金曜日 編集後記

1124号

▼考えれば考えるほど、2014年8月の「吉田証言」誤報問題に端を発した『朝日新聞』バッシングは、戦後言論史に残る異常事態であった。当時、『産経』を筆頭に『週刊文春』や『週刊新潮』等、『朝日』や植村隆元記者を執拗に攻撃したメディアは日本軍「慰安婦」問題について無知であり、見当外れの罵声をがなり立てていたに等しい。「吉田証言」が誤報だろうが何だろうが、「慰安婦」問題の本質とは何の関係もないし、植村元記者が「強制連行の誤解」とやらを広めた事実などなかったのだ。当時、本誌はそれなりに反論したつもりだが、新聞広告や中吊り広告で宣伝してくる相手の声は大きすぎた。だが、この問題は韓国の「少女像」一つ取ってもまだ考え違いしている政府やメディアが象徴するように、依然尾を引いている。南京史料をめぐる中国のユネスコ世界記憶遺産登録についても同様だ。しかし、真実ほど強いものはない。『産経』が歴史偽造とデマ宣伝に徹する限り、本誌の批判は弱まることはない。(成澤宗男)

▼新藤健一さん執筆のオスプレイ飛行マニュアル記事(2月3日、10日号)が反響を呼んでいます。新藤さんと小誌名を明記して『しんぶん赤旗』(2月10日)が報道するなど後追いが出てきました。『琉球新報』は2月4日に報道、『沖縄タイムス』にも動きがあります。小誌にコメントをいただいたリムピースの頼和太郎さんらを招いた学習会が2月11日、沖縄・名護市で開かれています。この学習会で挨拶した稲嶺進名護市長は「複数の米議会関係者から、乗員1人が行方不明(ミッシング)になっていると聞いた。99%死んでいる、という話だった」と明かしています(『沖縄タイムス』2月12日)。ただ、この学習会と翌日の那覇の学習会では、小誌記事がコピーされ、参加者に配られたそうです。発売中であることへの配慮は必要でしょう。なお、互いに誤解があったようですが、2月10日号記事の頼さんコメントに編集部取材部分が挿入されていました。PMCに関する箇所です。(伊田浩之)

▼「ナチは殴ってOKか?」というツイートが、ネットを席巻した。1月20日、ワシントンDCで行なわれた、トランプ大統領就任式への抗議行動。参加した1人が、近くでテレビのインタビューに答えていた、白人至上主義のオルタナ右翼リチャード・スペンサー氏に走りより、顔面を殴った。鮮やかなヒット&ラン。黒ずくめの服装でマスクをした人物は、顔も名前も不明。その動画が、ツイッターに貼り付けられ、ネタと化した。ナチは殴ってOKか?「OK!」「暴力はいけない、ガンジーを見よ」「あくまでも理性的に」等々。
 スラヴォイ・ジジェク氏の答え。「(スペンサー氏のような)奴は、殴る必要はない。たとえ彼に殴られても、立ち去れ。物理的な暴力を使うのは、新しいオルタナ右翼の方だ。共通の道徳も礼儀もない彼らは、腐敗を代表している。昨年、トランプが勝ったのではない、左派リベラルが負けたのだ。今、リベラルとは何かを徹底的に再考しなければならない」。(樋口惠)

▼昨年の10月14日(1108)号の本欄では本誌の定期購読者数を約1万5000と記しましたが、実はその後、予測していた数字より部数を減らしてしまいました。契約を更新される読者の方は平均84%超と、契約の自動更新をしていない定期購読誌(口座引落を除く)としては非常に高い更新率なのですが、新たに購読を申し込まれる方の数が例年より少なかったようです。それでもこの間、11月の本誌に同封した北村発行人からの購読者ご紹介のお願い「読者のみなさまへ」と題した手紙を通じ、306人もの方をご紹介いただき、74人の方が新たに定期購読を開始されました(2月13日現在)。定期購読者のみな様に支えられているありがたさを改めて感じ入った次第です。この場を通じて御礼申し上げます。そしてさらに1人でも多くの方に『週刊金曜日』の存在を知ってもらえるように、本誌「宣伝チラシ」の配布に協力して頂ける方は業務部までご一報ください。(町田明穂)