週刊金曜日 編集後記

1126号

▼のっけからこんな話で何だが、「キンタマを握られてしまっている」という話を今週の特集取材で幾度も耳にした。
「安保でキンタマを握られている」
「日米原子力協定でキンタマをつかまれてしまっている」
 話者はいずれも霞ヶ関の官僚。 いかにも男社会の話だが、ソコを強く握られれば痛いなんてものじゃない。プロ野球でキャッチャーがワンバウンドしたボールを捕り損ねて"直撃"し、悶絶している姿を思い出していただければいい。急所である。
 安保条約や原子力協定で急所を握られてしまっているから米国にはモノが言えないという理屈だ。
「対米従属と言われるかもしれませんが、米国には常に脅されている状態でもあるんです」
 言いたいことはわかるが、安保も原子力も一歩間違えれば多くの民の生命にかかわる。誰のための行政か、そこさえ間違わなければ、握られる弱みを克服したり、相手の"キンタマ"を握り返すことだってできるはずだ。(野中大樹)

▼森友学園問題。安倍昭恵氏について「やっぱりこの人、怪しかったんだ」なんて残念がってる人、何を今頃! 甘すぎます。小誌では2014年の段階で大村アスカさんが「政治時評」で、"家庭内野党"などと夫妻で別のベクトルに見えることが政権のイメージアップにつながる危険性を指摘、「期待するな」とぶった斬っていた。
 甘すぎと言えば、米国のグラミー賞やアカデミー賞授賞式での激烈なトランプ批判には、日本の芸能界との危機感の「差」を感じる。せめていま、彼らがいたら──ザ・タイマーズ。テレビの生放送で、自曲を放送禁止にしたFM東京を「腐ったラジオ」と歌い、司会の古舘伊知郎を慌てさせた覆面の男。あれ、こいつどっかで、と思わせといて実はキヨシロー。最後は「ザマぁみやがれぃ」と締めた痛快な姿は、ネットで見られます。
 さて、今週号より「アロハで猟師してみました」が始まります。なにやら脱力系と思わせといて実は、反骨精神溢れまくりの新連載です。お楽しみに。(小長光哲郎)

▼思うところあって、パスモやスイカの交通系ICカードは使わない主義。しかし最近、磁気定期(券)用の自動改札機が極端に少なくなり、磁気券利用者は日々が闘い(?)だ。
 いったんICカード利用者の流入を許してしまうと、なかなか流れが止まらないので、対岸からICカード軍団が入ってきそうなときは、あわてて自分の磁気定期を通す。するとリズムを崩されたICカード軍団に「ちっ」と舌打ちされ、カバンをぶつけられることにも、もう慣れた。いちばん困るのは、確信犯的「残高不足オートチャージ未設定閉じたゲート強行突破野郎(時にはお嬢も)」に磁気用の改札機を通られると、しばらくゲートが閉まってしまうこと。人員削減で窓口に駅員さんもおらず、ゲートが開くのをなすすべもなく待つしかない。
 ゲート強行突破すな。やるならせめてICカード専用改札機でやってくれ。そして鉄道会社は、磁気券専用改札機を設置してください。(渡辺妙子)

▼本社刊の『オリバー・ストーンが語る日米史の真実』にもある、米国人ジャーナリスト、I・F・ストーンの言葉「すべての政府はウソをつく」をタイトルにした映画をNHKBS1で見た。ネットと劇場でも同時公開され、ストーン監督が製作総指揮をしている。
 ベトナム北爆の口実となったトンキン湾事件やイラクの大量破壊兵器問題など、米政府のウソがI・F・ストーンや彼の精神を受け継ぐジャーナリストたちによって暴かれ、「9・11のとき、(イスラム教徒の多い)ニュージャージー州では大勢の人々が喝采していた」と発言するトランプも登場。
 これに比べれば、と安倍政権の憲法改正や南スーダン情勢などをめぐる数々のウソは見過ごしていると、日本は戦争に巻き込まれる。前掲書には戦犯容疑者岸信介の孫である安倍首相の歴史改竄の企ては、米国が日米の歴史についてウソを言い続けているのと一致している、との指摘も。相性がいいトランプとの間で"一致"が飛躍しそうなのが怖い。(神原由美)