週刊金曜日 編集後記

1141号

▼脳科学者の茂木健一郎氏がお笑い芸人を権力者への批評の目がない「オワコン」だとツイッターで発言し、多くの芸人が反発する騒動があったが、最近危惧するのは、コメンテーターとして芸人たちがニュース番組に出ていることだ。
 問題は松本人志氏だけではない。一昨年のISによる日本人拘束事件時に安倍首相を擁護した加藤浩次氏は、「総理のご意向」との文書がリークされた際、「みんな言っちゃえばいい」「気にしないで言えばいいじゃん」という論点に固執し、問題の本質を問う議論に行かずニュースは終わった。
「麒麟」の川島明氏は池上彰氏の番組に出演し、米国と中国のどちらに日本はついていくのがいいのかという池上氏から投げかけられた二択に疑問を持つことなく、「トランプさんは稼ぎのプロだから」と米国を選んだ。批評の目どころか、基本的に時事について議論する土台にすらいない。こうしたオワコン芸人によって、安倍政権は支えられている。(渡部睦美)

▼先月末、前川喜平・前文部科学省事務次官の「出会い系バー」通いを報じた『読売新聞』。批判を受け6月3日、東京本社の原口隆則社会部長名で「公共の関心事」などと反論したが、その「公共の関心事」を決めているのは『読売』自身ではないのか。なんだか「共謀罪において『一般人』を決めるのは権力」というのと似てる。
 安倍政権の応援団とも言えるメディアは『読売』だけではない。『産経新聞』もその一つ。主義主張は異なることはあるけれど、『産経』の問題点の一つは「事実」を報じないことだ。好評を博した本誌2月17日号「ウソを重ねる産経新聞」を受けて6月末、『検証 産経新聞報道』(『週刊金曜日』編、金曜日刊)を出版する。能川元一さん、植村隆さん、斉藤正美さん、高嶋伸欣さんの寄稿に加え、本誌の成澤宗男も執筆。松沢弘さんや『産経』OBの座談会も収録している。『産経』がどのように反論するかが楽しみだ。(赤岩友香)

▼数年前、投書欄を担当していた時、よく投書して下さっていた読者の方から突然の手紙。曰く「炊きたてのごはんほどうまくありませんが......」と、できたてほやほやの著書『声にならなかった声』(岩崎保則著、七つ森書館)が同封されていました。毎回、"洒落の利いた"投書でいつも楽しませてもらっていたのですが、今回も秀逸。なんと「トイレットペーパー何回分かと交換可」とのことです(そんなことしません)。投書を担当していたのは何年も前のことなのに......と嬉しくもビックリしました。ありがとうございます!
 一方、最近は投書数が少なくなり、ページ数も減らさざるを得なくなっています。私自身、読者だった頃は読者同士の論争が好きで(?)投書欄から読んでいたほどだったので残念に思っているのですが。読者からの声も雑誌を表す重要な要素。ぜひ、最近の社会への怒りはもちろん本誌への感想、異論、批判(?)など、どしどしお送りください。(弓削田理絵)

▼5月12日号の本欄で記した通り、大手ネット書店の「アマゾン」は7月から、"取次店に在庫の無い既刊本の発注を中止する"ので、"同社との直接取引"を勧める出版社への説明会を積極的に開催しています。
 当社にとっても一番のお得意先が「金曜日」の商品を扱わなくなることは死活問題です。この間、情報収集に努めてきましたが、これを機に結びつきを強める決断をした出版社がある一方、態度を決めかねているケースも多いようです。実は以前より当社は直接取引を検討してきており、この春それに対応可能な倉庫会社に変更したばかりでした。しかし今回の極端な通達を目にして思い直しました。「金曜日」は7月以降も取次店を通じて商品を納品します。今後発刊からしばらく経過した書籍は「アマゾン」の画面で"取扱不可"の刻印が記されるかもしれません。ただやはり「一強」は危険過ぎる。我慢比べをしながら次の手は打っていくつもりです。(町田明穂)