週刊金曜日 編集後記

1146号

▼本号では大きな問題となった「アダルトビデオ(AV)出演強要」について取り上げました。
 ヒューマンライツ・ナウが報告書を発表した直後には、現役のAV女優らから「そんな人(被害者)は見たことがない」「今の業界はクリーン」といった声が上がっていました。被害を訴える女性に対して、なぜ同じ女性からそれを否定するような声が上がるのか。被害を認めることが性産業に携わる女性を否定することになるのか。このもやもやした気持ちが企画の出発点です。
 小野沢あかねさんとの対談で、北原みのりさんは「もし『AV出演強要問題』と名付けられなければ、これほど社会的に認知されなかったんじゃないかな」と語っています。少しでも「自主的」な部分があれば、それは「自己責任」。わかりやすい「被害者」がいなければ何も問題はないのか? 
 私のもやもやはまだ解消されません。読者の方、とくに男性の方にも一緒に考えていただきたいです。(弓削田理絵)

▼連合がそれまで反対していた「残業代ゼロ法案」を一転容認、との報が流れ、東京・千代田区の連合会館前では、労働者たちの怒りの声が渦巻いた。「連合は勝手に労働者を代表するな!」。
 当然だろう。連合が国内最大のナショナルセンターといっても、全労連も全労協もあるわけだし、そもそも、今や労働組合の組織率は17%程度。それなのに、連合が政府とさまざまな労働法制を合意すると、労働者全体がその影響を被ることになるのだ。「残業代ゼロ法案」こと「高度プロフェッショナル制度」が多くの問題をもつ制度であることは小誌でも何度か報じているが、そんな「悪法」を連合の一部の幹部が、安倍政権との"手打ち"で通してしまおうというのだから、許せるはずがない。
 容認を独断で主導した逢見直人連合事務局長には組織内からも批判が噴出し、内定していた次期会長も白紙とされるが、法案のゆくえはいまだ不透明。肝心なのは連合内部の人事などではなく、労働者の現実と未来だ。この問題は、稿を改めて報じたい。(山村清二)

▼「集団的自衛権行使」を強硬に推し進めようとしていた安倍政権に、当時、「ほんの少しだけ」ブレーキをかけていた公明党の山口那津男代表に強い期待を抱いていたものだったが......。その山口氏が最近「憲法改正は政権が取り組む課題ではない」とまたもや、単純な私を喜ばせるようなことを言う。でも安倍首相の言う「9条3項」は憲法改正の「加憲」以外の何物でもない。「加憲」という言葉は、公明党の発案。首相の「3項加憲」に理解をしめす公明党議員がいるのも頷ける。都議選の結果に力を得ての発言にしても、政権の一翼を担う立場の代表としての発言。その言葉に責任をもってほしい。テレビカメラの前で安倍首相批判を口にする自民党議員も出てきたが、首相を辞めさせるまでの勇気はまるでない。
 安倍政権の不正を糺すべく、現場でものが言えずにいる人達のためにもと、覚悟をもって発言している前川前文科事務次官。でも後に続く官僚はいない。(柳百合子)

▼この夏、九州北部や東北地区をはじめ、全国各地で記録的な集中豪雨が続いています。多くの方が亡くなり、住む場所を失いました。行方のわからない方もいらっしゃいます。その被害の大きさに立ちすくみ、声を失い、今はお見舞いの言葉を見つけることができません。ただ、1日でもはやく平穏な生活に戻れますようお祈りするばかりです。
 こうしたなか、郵便の配達事情も悪くなっていると思われます。まことに恐縮ではありますが、定期購読のお届け先に変更等がございましたら、業務部宛にご連絡をいただければ幸いです。その際には、「金曜日」WEBサイトの「住所変更」フォームをお使い下さい。もちろん電話やFAXでも承ります。また当社で一時お預かりして、後日ご連絡をいただいた際にまとめてお送りすることも可能です。このほか、ご要望があればお気軽にご相談下さい。大変な状況のなかお手を煩わせることとなりますが、どうぞよろしくお願いいたします。(町田明穂)