週刊金曜日 編集後記

1153号

▼8月下旬、神保町に蘭州ラーメンの店がオープンしました。メニューは牛肉麺のみ。中国人・日本人問わず連日お客が押し寄せ、行列必至、遅い時間に行くとスープ切れで閉店という、まことハードルの高い店ですが、何とか数回、食べる機会を得ました。ん~、おいしいです。毎日はいらないけれど、月に何回かは食べたくなる味です。神保町にはそのちょっと前にタピオカドリンクのお店もオープンしたので、牛肉麺食べてパールミルクティー飲めば、気分はプチトリップというもの。
 牛肉麺というと、ポピュラーなのは紅焼(ホンシャオ)系ですが、このお店は清湯(チンタン)系。ネット情報によると、蘭州でイスラム教徒の料理として誕生した清湯系の牛肉麺が、各地に伝わるうちにアレンジされ、そのうち紅焼系が生まれたらしい。ちょっと前には池袋でも蘭州ラーメンの店がオープンしたそうで、そちらも人気とか。突然巻き起こった蘭州ブーム、いったいどうしたというのでしょう? でもラーメンをきっかけに、日中が仲良くなるといいですね。(渡辺妙子)

▼村上春樹の対談本『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮文庫)に、指揮者の小澤征爾が、当時予定していたベートーベン・ピアノ協奏曲第3番(ピアニストは内田光子)の話が出てくる。2010年のこの共演は、小澤が体調を壊して流れたのだが、9月10日、長野県松本市で実現するというので聴きに行った。今回、内田が腰を痛めて直前の公演を中止、小澤も椅子に座っての指揮。満身創痍の2人だったが、82歳の小澤は熱が入ると立ち上がり、68歳の内田も魂のこもった演奏。スタンディング・オベーションは数十分続き、徒歩や自転車の貧乏旅行で血圧が上がり、青息吐息だった私も気付くと立ち上がっていた。
 松本は、若い頃に信州大学を何度か営業で訪問して以来。景観を大切にする町並みは相変わらずだったが、中心街に異様に巨大なビルが聳えていて驚いた。聞けばまもなく開店するイオンモール(敷地面積約6万平米)とか。オープン後の交通渋滞を心配する声をあちこちで聞いたが、美しい文化や景観を保ってきたこの街は、どう変貌してしまうのか。(山村清二)

▼8月25日号の本欄で、担当の小長光さんも紹介していましたが、初代担当者(?)としてもひと言! 本誌連載中の「それでも それでも それでも」がナナロク社より1冊の本になりました。
 齋藤陽道さんに初めてお会いしたのが、もう6年前。当初は3カ月の予定で始めた連載も、269回を数えるまでになりました!  単行本編集も佳境であっただろう7月中旬、「タイトルの原画ありますか?」と齋藤さんから問合せ。「ありますよー(捨ててはいない)」と返事したものの、はて? どこにやったかなぁ......とまったく余裕がない時だったため、結局探すことができなかったのでした。斎藤くん、ナナロク社さん、すみません!(単行本のタイトルは本誌からスキャンしたそう)。
 いまさら、ですが、「それでも×3」のタイトルは、齋藤さんご自身による書き文字です。いずれ"お宝"になるかもしれない原画。今度、探してみようと思います。タイトルの経緯については単行本の後書きで齋藤さんが触れられていますので是非!(弓削田理絵)

▼重大な原発事故(レベル7)が起きても問題ないとした国が、宇宙空間を飛行するミサイルで大騒ぎしている。安倍首相は「北朝鮮の暴挙は断じて容認できない」と非難したが、悪が悪を悪と罵っても何の説得力もないだろう。
 不正な買収が明らかになった五輪招致。国のカネや制度を私物化した森友・加計学園事件。大臣の不祥事の数々とその隠蔽工作。報道機関への圧力・言論統制。極めつきは安保法制や共謀罪の制定、憲法改正で戦争のできる国づくり。基本的人権、生存権の侵害など、その悪事は枚挙に暇がない。
 このたび北朝鮮情勢の緊迫化で衆議院を解散するらしいが、日本の政治情勢のほうが、はるかに緊迫化しているように思える。
 堀江貴文氏はJアラートを"安眠妨害装置"と揶揄したが、このまま安倍政権の存続を許せば、安眠どころではなく、今よりさらに市民の命が危険にさらされる事態になるだろう。真の緊急警報は、安倍政権の悪政により鳴り響いていることに市民はそろそろ気付くべきだ。(尹史承)