週刊金曜日 編集後記

1157号

▼今回の衆院選は、この国の歴史の大きな転換点になるかもしれない。未来の人々が振り返って、「あの時だった」と言う可能性がある時点に今、この国に暮らす一人ひとりが立っている。今週号の表紙が撮影された10月5日・日比谷野外音楽堂の現場に出向いて、その空気を体感した。まさに「主権在民」なのだ。まだ遅くはない。
 何かできないかとネットを検索「選挙に行こう!!大運動」というページを発見。共感したので要約・引用する。
〈「投票に行こう」という呼びかけは、選挙運動にはあたらないから、公職選挙法の規制を受けない。誰でも、いつでも(選挙期間前でも、期間内でも、投票日当日でも)、どんな方法でも(電話でも、手紙でも、ブログやSNS、Twitterなどでも)、自由に行うことができる。「一緒に行こう」と誘い合ったりすることも自由。もちろん、特定候補の当選を目的とした言動は一切ないことが前提。どんどん呼びかけを広げて、少なくとも自分の手の届く範囲の人々の投票率は100%を目指そう。〉(本田政昭)

▼2000年頃、詩人の石垣りんさんに執筆をお願いしたことがある。当時連載していた、毎週異なる筆者が自由な主題で執筆するコラム「さんぽ道」の依頼だ。
「金曜日から依頼をいただくなんて光栄ですが、私にはとてもそこまでの力はありません」「書けるかなと思ったら、その時に連絡しますね」という謙遜のお返事で、「いつまでもお待ちします」と答えたのだが、その後亡くなられ、掲載は叶わなかった。
 石垣さんの「表札」を初めて読んだときの感動は忘れられない。
......様も殿も付いてはいけない、
 自分の住む所には自分の手で表 札をかけるに限る。
 精神の在り場所もハタから表札 をかけられてはならない
 石垣りん それでよい。
 肩書きなしで生きる潔さ清々しさ。自らの頭で考え自らの足で立つ、お名前の通り凜とした姿勢を今も尊敬している。
 自分の住む所の政は、自分の頭で考えて決めるに限る。日本の「表札」を決めるのは私たちだ。官僚でも政府でもない。(宮本有紀)

▼神戸製鋼所のデータ改竄が発覚したが、若い頃同社に入社した安倍晋三首相は、当時入力ミスで長さ不足のパイプを大量に製造したと述べている(『産経』2016年3月31日付)。首相が「私の社会人としての原点」と語る同社だが、今回の製品は自動車や新幹線などに使用されており、人命にもかかわる大問題である。
 首相が「原点」とするのはそんな同社の体質かと皮肉を言いたくなるほど、嘘、捏造を続けた安倍政権が問われる今回の総選挙は、マスコミ各社が自公の圧勝を予測。憲法改悪の発議は秒読み段階だ。
 本号から高田健さんの隔週連載「STOP! 9条改憲」が始まる。総がかり行動や市民連合、さらに「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」。そうした改憲反対運動の、つねに最前線にいる高田さんに、いま9条改憲を止めるために何ができるか、何が求められているかを伝えてもらいます。
 とは言え、まずは22日の投票日、憲法改悪阻止に向け、一票の力を信じたい。(山村清二)

▼毎年この時期のお願いです。先週の10月13日号から来月上旬の発行号にかけて、定期購読の「大量更新対象号」にあたり、一気に約4000名の方が契約の切り替えとなります。この時期に集中しているのは、創刊時より途切れずに購読をされている読者の方が多いからです。まだ更新がお済みで無い方は引き続きの購読をよろしくお願いいたします。また手続用紙が見当たらない場合は再発行してお送りしますので、業務部宛にご連絡をいただければ幸いです。
 さて、22日は衆院選の投開票。「モリカケ隠し」解散からこの間、「立憲民主党」が結党された10月3日ごろから、定期購読の申込みがジワリと増えての部数増。ところが翌週、与党圧勝の予測が各社世論調査で明らかにされると今度は徐々に縮小傾向。たしかにその予測は憂鬱を大きく通り越し、恐怖感さえ覚えます。でも諦めたらオシマイ。少なくともどんな風景が拡がろうとも『週刊金曜日』は存在し続けます!(町田明穂)