1159号
2017年11月03日
▼今年の創刊記念号は11月3日。新たな1年を始める号の刊行日が憲法公布日なのは、ずっと憲法をとりあげてきた本誌にぴったりだ。
政治状況は戦後最大の「壊憲危機」が続くが、一方で「市民力」も高まっている。特集の対談で植野妙実子教授は「少し前なら立憲民主という党名は堅苦しく感じられただろうが、躍進は市民が立憲主義を認識した証」、中野晃一教授は「市民が野党をつないだからこその結果」と、市民の力を実感していた。確かに、若者たちが声をあげたことで「民主主義・立憲主義を壊す安倍政治を終わらせる」目的の市民が結束し、それが野党共闘を実現させた。「政治とは一線を画す」人が多かった憲法研究者たちも今や壊憲政治に物申し、市民として活動を始めている。
「あすわか」弁護士たちは「憲法をとりもどすのは安倍さんじゃない、私たち」と話してくれた。同感。国会を、憲法を変える議論の場から憲法を実現させるための議論の場へ。そして憲法をとりもどそう。私たち市民の手に。私たち市民の手で。(宮本有紀)
▼投票しない理由はさまざまある。今回の選挙で期日前投票をした人は、過去最多の2137万人あまりだった。私の周りでも期日前投票をしに行った人は多かったが、投票所に行ったのに、投票しないで帰った人もいた。投票所が長蛇の列で、1時間待ちの所もあったということはいくつかの報道で伝えられた。どんな状況だったか知り合いに聞くと、ある東京都内の投票所ではスタッフが「2時間待ちです」と告知しており、「待っていられない」と帰った人がいたという。選挙人名簿のデータが入ったパソコンは1台しか用意されておらず、それが待ち時間を長くしていることは明らかだったそうだ。
最近海外に移り住んで在外選挙登録が間に合わず、投票できなかった人の話も聞いた。申請してから在外選挙人証が交付されるまでには約2カ月かかる。今回、突然の衆院解散宣言から実際の選挙まで1カ月も時間がなかった。なぜ選挙に行かないかを問うことも重要だが、投票するつもりがある人の投票する環境を整えることにも目が向けられるべきだ。(渡部睦美)
▼お陰さまで本誌は創刊24周年を迎えました。創刊時から比べると、日本国憲法を取り巻く状況は悪化するばかり。ときに下を向いてしまうときがありますが、先日、元経産官僚の古賀茂明さんから「諦めたらそこで終わり。権力側は僕らを分断して個々に潰していくのが目的だから、バラバラにならず、一緒にがんばっていくことが大切だよ」と、『SLAM DUNK』の安西先生並の言葉をかけてもらいました。「今の社会がおかしい」と思う人と一人でも多く連帯していきたいですし、私も誰かを元気づける言葉を発信できるよう、精進していきます。
その連帯の輪を広げるため、この創刊記念号から本誌編集委員・佐高信さんの新連載「憲法を求める人びと」が始まります。憲法の理念を求め、実践している方々を毎回お一人ずつ、ご紹介していきます。イラストは、以前の連載「抵抗人名録」と同様、いわほりけんさん。「新・政経外科」と交互に掲載していきます。(赤岩友香)
▼流行語大賞を引き合いに、安倍晋三首相とトランプ米大統領がそろって辞めれば「世の中明るくなる」と本欄に書いてから5カ月。安倍氏は"国難突破"の選挙に勝ち、トランプ氏もしぶとく居すわっている。世の中真っ暗闇が続く。
選挙のごたごたで、各党の本性が見えたのがせめてもの収穫だった。これからの課題は、安倍公約の実現をいかにして阻むか。その第一は平和憲法が壊され、自衛隊が米国の求めに応じて全世界に出動できるようになることだ。火の粉は日本にも降りかかってくる。
勝因の一つ「アベノミクス」については成果の有無だけが議論され、それを支えて膨らむ一方の財政再建は棚上げだった。このまま放置すれば破裂して株価も暴落、私のわずかな年金も危うくなる。
若い人に安倍支持が多かったそうだが、派兵や財政再建の苦しみを主に担うのもその若い人たち。功成った安倍氏はトランプ氏とゴルフなどしながら余生を楽しむことだろう。そうなることだけは、何としても防ぎたい。(神原由美)