週刊金曜日 編集後記

1161号

▼人は正しい情報があれば正しい判断ができる、よりよい社会に向かうことができるはずだ。だから事実をわかりやすく伝える職業に就きたい。そう考えて記者や編集者の仕事をしている。経験を積むなかで、「人間の素晴らしさ」も伝えたいことの前面に出てきた。
 取材現場で逢うさまざまな人たちに刺激されている。かならずしも人格者だけではない。人はときに弱いし、しくじる。もちろん犯罪など論外だが、罪を憎んで人を憎まず。やはり、人間ってのはいいのではないだろうか。「まんが日本昔ばなし」ではないが......。
 だから落語が好きだ。故立川談志は、落語を「業の肯定」と喝破した。若き本多勝一編集委員も落語好きだったことでしられる。
 落語は生で味わうほうが格段に面白い。寄席や劇場に足を運んでいただきたい。残念なのは、談志の生の高座をもう見れないこと。ただ、人間の本質を伝える談志の噺はDVDやCDで聞ける。その素晴らしさを伝えたいと願ってきたが、七回忌を機に特集を組むことができた。合掌。(伊田浩之)

▼私も体のあちこちにガタが来はじめるお歳頃。「朝食にパン=食後血糖値が急激に上がる」なーんて健康話はいちおう気にはなりつつ、パン好きが毎朝のパンを諦めるのは無理ってもの、みたいです。
 ただ、美味しく、かつトランス脂肪酸など原材料の点でも問題のない贔屓のパン屋が軒並み自宅や職場から遠いのが、目下の悩み。結局、帰宅時に乗換駅近くのパン屋に寄ることになるのだが、わざわざ途中下車してまでパンを買うのって結構、面倒。満員電車でパンを抱え、時に潰されそうになるのを守りながら。ここまでする必要あるかお前? と思うことも。
 そんなとき、パリの人たちがいかにパン(バゲット)好きかをテレビで見た。フランスでは法律でバゲットに保存料を使えない。皆がその日の分を毎日、買う。だからパリにはパン屋がわんさか。それでも、贔屓の店で買うために20キロ先まで毎朝、車を走らせる人も珍しくないとか。おお、すごい執念......パン好き、かくあるべし。負けてられんなー、と簡単に感化されたのだった。(小長光哲郎)

▼寒くなって来て、今年も白菜漬けの季節です。1個を四つ割りにして、日陰干しにすると甘みが出る。塩だけ(白菜の重さの4%、重しは2倍)で2日間下漬けして水を切り、昆布、鷹の爪を入れて本漬け。2~4週間が食べごろ。3月まで5~6回、ベランダの日陰が定位置になる。
 好きだということもあるが、白菜が野菜の中で一番「すごい」と思っている。白菜は決して喋らず(ほかの野菜も喋らないけど)じっとして脇役で、冬の鍋には欠かせない。そして主役となるキムチでは、他の追随を許さない。
 椎名誠さんの『おなかがすいたハラペコだ。』(新日本出版社)を読んでいたら、タマネギが一番エライと力強く書いてあった。
 小岩での貧乏合宿時代、タマネギさえあればどうにかなった。炒めて醤油をかけてご飯にのせれば空腹を満たしてくれた。カレーには必需だし、「カツの下にタマネギがないカツ丼など考えられないのだ」とおっしゃる。フライでもうまい。ウ~ム、ダイコンを入れて3横綱とするか。(土井伸一郎)

▼大手法律事務所アップルビーから流出したとされる「パラダイス文書」。不謹慎にもアップルビーでバーモントカレーを連想してしまった。パナマ文書に続いて、タックスヘイブンによる租税回避の実態が明らかになった。世界の首脳、王族、多国籍企業が関わっているらしい。エリザベス女王の資産の一部が15億、米投資ファンド社長の政治献金が28億など...そしてブルゾンちえみは35億、郷ひろみは2億4千万(関係ないか)。いずれにしろ途方もない金額だ。かくて富裕層は栄え、貧富の差は広がるばかり。
 ピケティ氏の提唱する世界的な累進課税含め、国際的に規制する法律が必要かもしれない。サンダース氏は租税回避に対抗する新法の制定を求める書面を議会に提出したそうだ。まさに「税金は金持ちから取れ」だ。 
 さて、そんな富裕層に手厚く、憲法をないがしろにするアベ政治を終わらせるため読者拡大をお願いしていますが、ご紹介が殺到しています。つくづく読者の皆様に支えられていると痛感します。深く感謝申し上げます。(原口広矢)