1188号
2018年06月15日
▼今週から「私たちは黙らない!」シリーズを掲載する。
4月27日号の本欄で、「財務次官セクハラ報道に端を発する一連の反応(略)には立腹を通り越して脱力」と書いた。これまでも性暴力やセクシュアルハラスメントの問題をとりあげてはきたが、社会的な理解が進んでいないばかりか、被害者の心をさらにえぐる二次被害を国務大臣がまき散らして平然としていられる現状に、やる気もしぼみそうだった。
闘志を取り戻してくれたのは5月7日の財務省前アクションだ。大雨や場所の狭さという悪条件にも、交通整理する警官の妨害まがいの大声にも負けず、熱いスピーチが続く。それを聞きながら、闘う人たちの声を伝える誌面リレートークをしたいと思いついた。
被害にあっても沈黙を強いられてきた被害者たち、共感の声をあげるだけで叩かれた人たちが声を上げ始めた。おかしいことはおかしいと言えない構造・社会こそがおかしい。「黙らない」企画らしく、言葉で闘う女性たちの「メディアで働く女性ネットワーク」からリレーを始める。(宮本有紀)
▼週末、散歩の途中で小さな古本屋に立ち寄った際、妻が懐かしい本を発見。岩波書店版『ちびくろ・さんぼ』(1953年刊)だ。差別問題をきっかけとして絶版となり、長い間入手困難だったものだが「とらとバターの話」だけでなく、第2話もあることを知る。残念ながら高額なので購入は断念。
調べてみると、岩波書店版『ちびくろ・さんぼ』は2005年に瑞雲舎から復刊されていて、現在でも入手可能。さらに08年には径書房から『ちびくろサンボ』という書名で〈アメリカで出版された原書の版型やイラストをできる限り忠実に再現〉した本も出ている。日本で定本とみなされていた岩波書店版『ちびくろ・さんぼ』は、〈もともとの絵本とは大きく異なるもので、本の大きさやページ数だけでなく、イラストも、一部がカットされたり、合成されたり、反転されたり〉したため、本物とかなり違うという。図書館で借りてきて比較してみたが、両方良い。岩波書店版のヨコ組をタテ組にするときに生じるある意味強引な編集力から、当時の日本の「希望」的な空気を思い描く。(本田政昭)
▼借金を帳消しにする「革命」のために、ハッカー集団が巨大な「悪の」金融会社のシステムに侵入して借金のデータを消してしまう。「革命」後の混沌とした状況で、思わぬ事態に直面する。米国のテレビドラマ「ミスター・ロボット」は、エジプトのアラブの春を体感し、学費ローンを返済してきたプロデューサーが創ったドラマ。ドラマで使われるPCのOS(基本ソフト)は無料のオープンソフト、リナックス。専門家が監修する。
OS=ウィンドウズ未搭載のPCを購入しリナックスを入れた。ウィンドウズを販売するマイクロソフトは、PCとOSを繋ぐソフトに、「安全」なウィンドウズ以外を排除するようPC販売会社に求めてきた。リナックスを入れるのには、実際に制約がある。88%のシェアを誇るウィンドウズだが、リナックスを取り込まざるを得ない。IoT(物のインターネット)やAI(人工知能)の開発にリナックスは欠かせないからである。無料でオープンであることが、知識や技術の集積や発展に欠かせないことは常識だ。(樋口惠)
▼今年も、書籍常備の入れ替えの季節になった。弊社が6月末決算のため、取次搬入日は7月上旬に設定している。昨年は7月7日で七夕、ちなみに今年は7月6日でサラダ記念日である。セットを組む際は、回転率の悪い(売れ行きが悪い)書籍をはずし、替わりに新刊を加える。取次経由で常備の申し込みは受け付けるが、申し込み忘れの書店もあり、フォローは欠かせない。これから一年間、新しい常備セットを書店に預かってもらい、販売していただく。
前年度の売れ行き上位は『ひとめでわかる のんではいけない薬大事典』、『香害』、『はじめてのマルクス』、『日本会議と神社本庁』、『私の1960年代』といったところか。今年度は『21世紀に『資本論』をどう生かすか』(「はじマル」と同様ロングセラーの予感)、『加害の歴史に向き合う』(売れ行き上々)、『貧困なる精神27集』(本多編集委員新刊)、『沖縄は孤立していない』(最新刊)などを加える予定。なお、弊社常備取り扱い書店については、業務部までお問い合わせください。(原口広矢)