週刊金曜日 編集後記

1193号

▼今週号で日本のパブリック・リレーションズ(PR)の第一人者である井之上喬さんに日本大学炎上の論理を聞いた。井之上さんは内外の大手企業の危機管理を手がけているが守秘義務があるため口が堅い。それを文字にできないのが残念だ。実は井之上さんは音楽畑からこの業界に入り、その来歴は多彩だが、音楽業界時代の仕事の一つに、首都圏だと耳馴染みのJ-WAVEのジングル制作もあるそうだ。さて、記事をお読みいただけると、PR(このように略してしまうから誤読されてきたのだが)のポイントがおわかりになると思うが、日本企業の危機管理におけるPRは記事潰しや、事前工作活動によるマスコミ対策だった。その代表が広告代理店やグループ企業だ。この誤ったPR活動については先日発売した『電通の正体 新装版』でも存分に触れている。本書発刊を記念し、7月22日13時から新宿ロフトプラスワンで山口敏夫氏、本間龍氏らをお呼びしてトークイベントを開催。ぜひ遊びに来てください。(平井康嗣)

▼宗教について、個人的に忘れられない事がある。米国を本部とする、日本のあるキリスト教教派の公式の集まりでの出来事。米国本部でリベラルな神学が主流になろうとした時に、信徒の集団が異議を申し立て、リベラルな神学が進化論を容認することも批判し、教派の基本に立ち返り、進化論を拒否し、聖書の「創造」を文字通り信じる事が改めて決められたと米国人が報告した。信徒の代表が、日本では進化論が公教育で教えられ一般に浸透し、その拒否は日本では受け入れられないので、難しい問題が起こると疑問を呈した。
 進化論がキリスト教に与えた影響は大きく、現在でもキリスト教原理主義の拒否感は強い。進化論に対抗しようとする宗教的傾向の延長線上にオウム真理教が位置づけられると、宗教学者大田俊寛氏は述べる(『現代オカルトの根源』)。日本にも影響を与えてきた神智学、スピリチュアリズムに端を発する「霊性進化論」が骨格であり、キリスト教原理主義も影響を与えているという。(樋口惠)

▼友人が静岡県の浜北区で33年間続けた書店を先月閉じた。随分と悩んだ末の結論だった。それでも賃貸ではないので、ここまで続けてこられた。
 青山ブックセンター六本木店は38年間、代々木上原の幸福書房は40年の歴史に今年幕を閉じた。
 もう「町の本屋さん」はいらないのだろうか。20~50坪の書店単独での商売が成り立たなくなってきているようだ。
 そこにいつもの知っている店主の顔があって、語りかけると、何か答えてくれる。そんな交感場所が町から消えていっている。
 一方でその反動のように、または消えていくのを惜しむように、神保町の「東京堂書店」(明治開業の老舗)1階平台には、いわゆるリアル書店関係の本がたくさん置かれてる。本屋が好きな人はたくさんいる。そしていろいろな試みが起きてはいるけれど。
 あと30年ほどだろうか。「むかし、各駅に1軒は、本だけ売っている本屋さんという店があったんだよ。」と聞かされる子どもたちが出てくるのは。(土井伸一郎)

▼先のロシアW杯で過剰に痛がるブラジル代表選手のリアクションを真似た行為「ネイマールチャレンジ」が世界中で流行している。
 悪事を働いてもそれを隠すのが苦手なのはこちらの首相も負けていない。股関節周囲炎を理由に西日本豪雨災害の被災地視察を取りやめた安倍首相。これ見よがしに記者の前で足を引きずって歩いてみせたが、医師の診断は「日常生活に支障はなく、特段の治療は不要」。トランプとの会談やゴルフなら這ってでも行っただろう。安倍首相よ、忘れるな、苦しんでいるのは足が痛い程度の被災者ではないことを。しかし、自国の災害中に、米国のためのカジノ法案を進めようとする政権なのだから自国民の苦しみなど理解出来まい。
「国民の生命と財産を守るため」とうそぶき、あれだけ緊急警報を鳴らし続けたが、北朝鮮のミサイルは落ちなかった。で、本当の危機の時は宴会で、足が痛いか......。
 W杯で3連覇した国はない。安倍首相の3選がないことを切に願う。(尹史承)