週刊金曜日 編集後記

1196号

▼性的マイノリティ(少数者)に対して「生産性がない」との理由で税金を使うことに反対する自民党・杉田水脈衆議院議員の主張は、「差別的言動の解消」を目的としたヘイト対策法に抵触する言動ではないか。こんな輩にこそ税金を使うべきではない。子どもを産むのはそもそも「生産」ではない。障がい者も高齢者も難病などに苦しむ人たちも、見方によれば「生産性がない」。監獄にいる人も引きこもりの人も介護などで働けない人も「生産性がない」。おそらく、国会前にデモに来る人も「生産性がない」のだろう。国会議員としての適格性のない者を自民党に引き入れた安倍晋三首相の責任こそ問われなければならない。
 メディアは連日、日本大学や日本ボクシング連盟のトップを叩くが、内部から「おかしい」「辞めろ」と声が上がるだけ健全だ。巨額の税金を使って公文書改竄など1年以上にわたり国会と国民を騙し、虚偽と隠蔽を続けるトップが3選? 腐っているから声も上がらない。大学や連盟より百倍も千倍も問題ではないか。(片岡伸行)

▼世代交代もあり、「戦争を語り継ぐ困難さ」がいよいよ、ぎりぎりのところにきていると感じる。ただ、「だから人間は過ちを繰り返すのだ」と言ってしまったら話は終わり。早乙女勝元さんの言う「追体験と学び」のために、私たちおとなが心しないと、と思う。
 私も早乙女さんの『猫は生きている』を幼い頃に読んだことは大きかった。田島征三さんの絵とともに、子どもには衝撃的で、胸を抉られるようだったけど、それこそが貴重な学びだったはずだ。
 もう一つ、いまも私の心と体に深く刻まれているのが、合唱曲「木琴」(詞・金井直、曲・岩河三郎)だ。学校の合唱祭で歌った。戦争で死んだ妹に語りかける詞。「あんなに嫌がっていた戦争が/おまえと木琴を焼いてしまった」。各パートを何度も練習する毎に、歌詞がだんだん自分の血肉になっていく。あのときの生徒で、「木琴」の詞の世界とピアノの音色を忘れている人はいないと思う。出会えたのも、薦めてくれたおとなが周りにいたからだ。(小長光哲郎)

▼4年前、なぜだかカメラ撮影者として誘っていただいたドキュメンタリー映画がある。タイトルは『望むのは死刑ですか 考え悩む"世論"』。
 当時、政府が行なった意識調査の結果として「国民の8割が死刑に賛成」と発表された。しかし、その8割の実情とは何なのか、映画は浮き彫りにする。
 都内に市民135人を集め、日本の刑事制度をテーマに、審議型意識調査を実施。参加者は、弁護士や専門家、犯罪被害者などから話を聞き、2日目には複数のグループに分かれて意見交換をするというもの。知ることで初めて悩んだ参加者たち。2日間でその考えは揺らぐ。その前後の意識の変化に焦点を当てた。
 この映画が東京渋谷・アップリンクで、緊急上映されると連絡を受けた。上映日は8月20、21、24日の3日間。いずれもモーニングショーで、監督とゲスト(オウム事件の"当事者")とのトークつき。詳細はホームページURL・http://nozomu-shikei.wixsite.com/movieをご覧ください。(市川瞳)

▼突然のお知らせで申し訳ございません。このたび"定期購読期間の「3年購読」と「2年購読」を廃止"させていただきます。今後は「1年購読」「半年購読」金融機関からの「月々引落とし」の3種類となります。一方的な決定で心苦しい限りです。昨年来の部数増キャンペーンでは、読者のみなさまからのご支援に加え、過去最大数のDMを発送して一定の成果を上げました。しかし当初の目標数値には至っておらず、厳しい経営状況が続いております。また年初から「ゆうメール」の配送料が値上げとなり、ここにきて割引率の高い購読期間の維持が困難になった次第です。
 対向頁でも触れていますが、当社の経営状態はこれまでにない段階に入ってきております。この状態が続けば廃刊も視野に入れざるをえません。それを避けるために現在社内では、大幅な経費削減に取り組んでいる最中です。併せて『週刊金曜日』の灯を消さないために今後さらなる販促活動を実施してまいります。(町田明穂)