週刊金曜日 編集後記

1220号

▼2月末で『週刊金曜日』を定年退職する。2006年以来、読者と取材に応じてくれた方々には大変お世話になった。大方の取材相手には嫌われたが、その方々も含めてお礼と感謝を申し上げたい。
 今後は年金暮らしとなるが、取材活動と執筆は続けていく。3月には、本誌で連載中の「晴海選手村疑惑」をめぐるシンポジウムにパネリストの1人として呼ばれた。シンポは「晴海選手村土地投げ売りを正す会」(中野幸則代表)の主催で、3月5日午後6時から江東区総合区民センターで開かれる。関心のある方はぜひご来場を。4月には昨年に続き、ある大学で話す機会もいただいた。他の媒体でも執筆の予定で、意外と忙しい。
 偽造や改竄や虚偽発言を許さないという最低限の公正さが保たれている社会であれば、とうに存在できないはずの政権が続いている。ジャーナリズムの役割がますます問われる。引き続き『週刊金曜日』にご支援と叱咤激励をお願いしたい。本欄でお目にかかるのはこれで最後になる。長い間、ありがとうございました。(片岡伸行)

▼NHKの「2018年度第1四半期業務報告」に登場する「世論調査結果」によると、同年1月から2月にかけて16歳以上の3600人を対象に実施されたアンケートで、NHKの「公平・公正」について75・8%が「実現している」「どちらかというと実現している」と回答している。実に驚くべき数字だ。この国の大方の民は、NHKの「アベチャンネル」ぶりすら見抜けぬほど暗愚だということか。これでは、本誌の「NHK特集」で報じたような政権への露骨な「好感度」誘導が、やすやすと効を奏するはずだ。安倍首相の「支持率高止まり」は、その証明に違いない。高い視聴率を誇るニュース番組で姑息に細工された報道を流すことで、首相とその内閣がまともであるかのようなイメージを植え付けるのは赤子の手を捻るより容易だろう。何しろ相手は、この程度のレベルなのだから。メディアを使った大衆操作は多くの実例があるが、日本のそれは手口の姑息さ以上に、のせられた側の劣悪ぶりが目に付く。(成澤宗男)

▼2月8日号の金曜アンテナで、中村時広愛媛県知事を批判した月刊誌の記事の広告部分を『愛媛新聞』が黒塗りにした問題を掲載しました。黒塗り理由について、愛媛新聞社(本社松山市、土居英雄社長)から回答期日を2日過ぎた2月6日、回答がありましたので紹介します。〈愛媛新聞広告倫理綱領の「他を中傷、ひぼうし、また他人の名誉を傷つけ秘密を侵すおそれのあるもの。」に基づき、愛媛新聞社として判断しました〉
 愛媛県内のマスコミ関係者に聞くと、「この程度の記事は誹謗中傷には当たらない」と誰もが口を揃えます。中村知事への忖度と受けとられても仕方ないでしょう。
 アンテナ記事では「問題視する社員は少数」と書きましたが、愛媛新聞労組の意見集約には100件以上の声が寄せられたそうで、上層部への厳しい批判も多いようです。『愛媛新聞』はもともとリベラルな社風でした。自浄作用に期待します。(伊田浩之)

▼金曜夜10時、NHKのドラマはいい。飲み会と重なっても録画してなるべくみるようにしている。「この声をきみに」「透明なゆりかご」「昭和元禄落語心中」。どれも琴線に触れるドラマだったが、今回は変化球を投じてきた。「トクサツガガガ」。戦隊ヒーロー好きを職場では隠しているという女性が主人公。同じ戦隊オタクの先輩やアイドルオタクの同僚とのやりとりが面白い。ガガガという響きがいかにも特撮っぽい。第3話の「ツイカセンシ」とは物語の途中で新たに加わる戦士のこと。敵か味方かわからず謎のキャラクターとして現れ、話に深みを与える。最終回を迎える戦隊シリーズ「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」では「ルパン(パトレン)エックス」が該当する。
 なぜそんなこと知っているかといえば、私はアラカンだが、戦隊シリーズも守備範囲である。アラカンとは還暦世代のことで嵐寛寿郎ではないらしい。オタクは老若男女関係なく国境も越える。オタクが世界を救うか?(原口広矢)