週刊金曜日 編集後記

1223号

▼3月8日、記者の女性たちに「国際女性デーだから」とミモザの花を渡した鳩山友紀夫氏のような首相がいた時代は遙か遠く、「セクハラ罪という罪はない」だの「あなたの質問には答える必要がない」だの閣僚発言に心冷える日々だ。
 今号でこうした男目線社会を考察する記者座談会を載せているが、収録後にもグリコの「パパのためのママ語翻訳コースター」や、トヨタ自動車の女性向け「やっぱり、クルマの運転って苦手ですか?」ツイートなど批判殺到→取り下げ騒動が続いた。なぜダメなのか気づけない人たちばかりが組織の重要な地位にいるからなのか。
「本箱」で紹介している『女性の権利宣言』(創元社)には、古今識者の言葉が載っている。マルクスやヴィクトル・ユーゴーなど超有名どころもいるが、フランソワーズ・ジルーの「重要なポストに無能な女性が選ばれたとき、本当の意味で女性は平等になるだろう」に膝を打つ。重要なポストに無能な男が男ゆえに就く時代は終わりにしなければ。(宮本有紀)

▼フジテレビは韓国の3・1独立記念式典を「反日1万人集会」と報じた。テレビ朝日やTBSも韓国で「反日ビジネス」加熱と騒ぎ立てた。そして外務省は韓国への渡航は危険であると注意喚起し、NHKはそれを大々的に扱った。
 日本のメディアは「反日」という言葉で嫌韓感情を煽り、戦争前夜であるかのような報道を展開。そこには先の大戦での反省や贖罪はどこにもない。いわずもがな朝鮮独立運動は反日運動ではない。
「正しい理解と心の触れあいに基づいた、新しい友好の関係を作り出していくことが、わたしたちと彼らとの不幸な関係をなくし、幸せをつかむ近道である」と、100年前の独立宣言書には記されている。文在寅大統領は記念式典で
「過去は変えられないが、未来は変えることができる。歴史を鏡とし、韓国と日本が固く手を結ぶとき、平和の時代が大きく近づいてくるだろう」と演説したが、過去の歴史に向き合おうとしない安倍政権やその御用メディアにとっては馬の耳に念仏か。(尹史承)

▼取材に3年、本当は5時間半の作品にしたかったという土井敏邦監督のドキュメンタリー映画『福島は語る』(2時間51分!)が9日から全国で公開される。言葉を引き出し人間を描いた、というだけあり、登場する14人の被災者の語りは生々しく、本音がストレートにこちらの胸に迫ってくる。
 避難先で友人からの心ない言葉に落胆し、病気になってしまったという女性。私は必要とされていないのでは、と涙をこぼす。息子を失い、手足をもがれたような感じだと、カメラの前ではじめて泣く男性。一つひとつの「福島の声」はつらいけれど、福島の現実から目を背けることはできない。
 話は変わり、県民投票前日に沖縄に飛び、辺野古の座り込みに参加した。そこで、なんと3人の本誌読者に会った。名古屋のYさん、京都のOさん、大阪のIさん。声をかけていただき、全国に仲間がいるのだとうれしく、心強かった。その後、訪れた宮古島では基地建設だけでなく......。この話は、次回へ。(吉田亮子)

▼「くらしの泉」ページでございますが、社会保険労務士の稲毛由佳さんにかわり、2月よりファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんにお金関連のトピックを書いていただくことになりました。お金に関する話題を、幅広くご提供いただく予定です。
 内藤さんはファイナンシャルプランナーだけでなく、ネパール女性の自立を支援するNPO「ベルダレルネーヨ」副代表でもあります。最近はネパールだけでなく、東北や沖縄でもプロジェクトを立ち上げているとのこと。「ベルダレルネーヨ」のフェアトレード部門「ネパリ・バザーロ」のサイトを見ると、手仕事によるステキな商品でいっぱいです(サイトはそれぞれURL・http://nbazaro.jp/ URL・http://www.verda.bz/)。
 が、しかし、「買うことによる支援」の大事さはわかっていながら、なかなか手が出ません。食品の値上げや消費税率アップなど、生活を直撃することばかりですが、余裕ができたらこうした商品を買いたいですねー。(渡辺妙子)