週刊金曜日 編集後記

1273号

▼新型コロナウイルス感染拡大防止のため、イベント・集会の中止が相次いでいる。保険がおりないらしいので損害は計り知れない。補償する仕組みができないものか。3月20日の「さようなら原発全国集会」も中止になった。臨時増刊号『まるごと山本太郎 れいわ新選組』を販売するはずだった、残念。
 感染しないように室内は換気し、うがい、手洗いを行なう。きちんと睡眠をとり、バランスのよい食事をとる。適度に運動する。たとえば、本誌2020年1月10日号で紹介した「スクワット」と「かかと落とし」はおすすめだ。
 そして思わぬところにウイルスの影響が出ている。デマに惑わされて買い占められ、わずか1日でトイレットペーパーが店頭から消えてしまった。次回の入荷は紙のみぞ知る。困ったことにわが家は残り2個。だが捨てる紙あれば拾う紙あり。引越し挨拶用トイレットペーパーを通販でみつけて購入した。猫のイラスト入りで紙質が良く贈答品としてうってつけだ。転居の多い年度末になりました。本誌を確実にお届けするために、送付先の変更は必ずご連絡をお願い申し上げます。(原口広矢)

▼企画のアイデアを練ろうと、自宅の本棚から持ってきた資料が手元にある。
 自動車雑誌『NAVI』(二玄社刊)の1998年6月号だ。巻頭特集は「オンナはクルマを愛してる」。新車試乗レポートだけでなく、社会や文化の視点からクルマを捉える企画も多かったのが同誌の特色。しかもその見せ方はオシャレで洗練されている。
 例えば、演歌歌手の石川さゆりの見開き写真。紺色のレインジ・ローバーを背に普段着(を思わせるカジュアルな)姿でポージングしている。
 自動車雑誌に演歌歌手?と読者の意表を突き、しかし女性演歌歌手が外車に乗ってたって(そして自動車雑誌に登場したって)別にいいよね、芸能人であっても「個人の生活と意見」があるよね、と気付かせてくれる、実によく練られたページだ。やや強引に言い換えれば、現在人気急上昇中の漫才コンビ・ぺこぱの「否定しないツッコミ」を20年以上も先取りしているのである。え、例えがわかりにくいですか、そうですか。
 ちなみにその号の新連載は現場ルポ「僕はホンダの工場労働者として働いた」である。(斉藤円華)

▼アリババ創業者で元会長のジャック・マー氏が、日本にマスクを100万枚寄贈してくれたとのことです。かたや日本では、ネットオークションにマスクを出品して、約888万円売り上げた方が。しかも某県議。
 ようやくマスクの不正転売禁止が始まりましたが、きちんと機能するのでしょうか。不正転売禁止自体はもちろんいいことですが、店頭販売分は担保されているのでしょうか。店頭にもネットにもない状況にならなければいいが――と思います。台湾や韓国と比べ、日本は取り組みが1カ月も2カ月も遅れているような気がします。いい加減、マスクの悩みから解放されたいですよね。
 本誌2月21日号の本欄で「武漢肺炎」という言葉を使用いたしましたが、非常に不適切な表現でした。私の知識のなさ、および配慮のなさから、読者のみなさまに不愉快な思いをさせてしまったことを、心よりお詫びいたします。「武漢肺炎」部分を「新型コロナウイルスによる肺炎」に訂正させていただきます。誠に申し訳ありませんでした。(渡辺妙子)

▼新型コロナ対策として、首相による緊急事態宣言を可能とする特措法が成立・施行された。既存の新型インフルエンザ等対策法で対応可能と指摘されてきたが、これが「改正」され今回の特措法となった。結局、立憲民主党や国民民主党も、緊急事態宣言時の国会への「事前報告」が付帯決議に盛り込まれたことを「成果」として賛成し、「事前承認」が必要だなどと最後まで反対したのは立憲民主党の山尾しおり議員や共産党などだった。私権制限が懸念される中、こうした時こそ野党の役割を発揮すべきところで、むしろそれを放棄した野党への信頼は一層希薄になってしまったのではないか。
 安倍首相は、「現時点で緊急事態を宣言する状況ではない」と述べている。確かに「現時点」では東京オリンピック開催が延期されるかどうかもわからないので、宣言する状況ではないだろう。ただIOCが延期か中止の決定をした後が怖い。首相から必要な指示を受ける「指定公共機関」に民放局が含まれるかどうかについて政府答弁に揺れがあったことを見ても、今回の野党の体たらくを見ても、危機感は募るばかりだ。(渡部睦美)