1295号
2020年09月11日
▼役職定年で副業が可能になったのを機会に、新宿のゴールデン街でバーテンのバイトを始めて4年になる。
以前、本誌の「新宿〈夜〉の読者会」が新宿区役所通りのジャズバー「スマイル」でひらかれていた。創刊時からの定期購読者であるオーナーの高本正之さんが主宰する読者会には、ターミナル駅という利便性もあり毎月10人以上が集った。その中のひとり、横山紀和さんが「スマイル」の閉店とバトンタッチするようにゴールデン街につくった店が15年目を迎える。その店が私のバイト先。
本誌を通していろいろな縁がある。ほとんどの客はウヰスキーや焼酎だが、カクテルのシェーカーもたまに振る。あとは手作りのサラダの評判がいい......と思う。
だがそこは「夜の街関連」の本命、新宿歌舞伎町。ゴールデン街でも長期休業や廃業した店が目立つ。W杯の時は、アイルランドのグリーンジャージで埋め尽くされた通りも閑古鳥だ。私もいよいよアルバイト撤退を決めた。
80年代、作家の樋口修吉氏にいまはなき「まえだ」に連れていかれてから35年。映画と恋とケンカ酒、突っぱっていた。いい経験をさせてもらった街。(土井伸一郎)
▼映画関連会社アップリンクで今年6月に発覚した、浅井隆社長による従業員(当時)へのパワーハラスメントはショックだった。
メンタルが壊れるほどのパワハラだったようだ。「殴るぞ」「精神疾患者を雇った俺がおかしかった」等々の暴言を従業員らに浴びせ続けたという。詳しくは元従業員による被害者の会のウェブサイト(URL・https://uwvah2020.wixsite.com/mysite)で読むことができる。
社会問題に焦点を当てた映画を数多く配給、上映してきたアップリンクでひどいパワハラが横行していたわけだ。それでいながら社長が「世界を均質化する力と闘う」などというのは悪い冗談だろう。
気になるのは、浅井氏が6月19日以降、沈黙を守っていることだ。こうした対応は『DAYS JAPAN』での性暴力加害者の広河隆一氏らのケースを思わせる。
岩波ホールは8月5日に発表した「アップリンク作品の上映に関して」の中で「アップリンクにおいてはより良い労働環境が作られ、今後も映画界のためにつくしてくださることを願っております」としているが、問題が置き去りになっていないか。まず被害者への直接の謝罪と賠償が行なわれなければならないはずだ。(斉藤円華)
▼米国の金融大手ゴールドマン・サックス社は、女性の取締役のいない会社の新規株式公開を今年7月から手掛けないことにしたと年初に報道された。ただ、女性の登用が遅れている日本やアジアでは適用を見送るとか。確かに日本でその新方針を適用したら取引できる企業が少なくなるだろう。東京商工リサーチがこの8月に発表した上場企業2240社の「女性役員比率」調査では、女性役員の割合は6%しかなく、女性役員ゼロの企業が51・4%もあるのだから。しかし、将来は日本を含むアジアでも新方針の適用を検討するそうだし、海外の機関投資家は役員の女性登用を促しているから経済界もうかうかしていられない。
安倍晋三氏は第2次政権以降「女性活躍」を政策に掲げたが、2020年までに国会議員や企業役員に占める女性割合を少なくとも30%にするという目標も達成できなかった。憲法学者に違憲だと言われ世論が大反対しても安保法制を制定した剛腕があれば、これくらい達成できたはず。間接差別や堕胎罪が残り、選択的夫婦別姓すら実現していない国は世界から取り残される。次政権がどう取り組むのかお手並み拝見。(宮本有紀)
▼ここ数年、台風が来ると必ずSNSで「台風 新聞配達」で検索する。SNSには、台風直撃の時間帯に配達に行かなければならない、配達に行く家族が心配、などの声が溢れる。配達が終わった時間帯には無事を伝えたり、やっぱりケガをした、といった投稿が相次ぐ。読者からも、こんな日に新聞が届いた、という驚きや、配達員を休ませないのか、という疑問、こんな日くらい休めばいいのに、という新聞社の対応に呆れる感想が多数投稿されている。
そんな声におされてか、それとも配達員の死傷者の存在が無視できなくなったのか、近年は災害時の新聞配達について新聞業界での取り組みも増えてきた。台風接近時に配達の遅れを見越してウェブ上で紙面を公開するところもある。特に発行本社が責任をもって配達中止をするところが出てきたことは大きい。『琉球新報』や『沖縄タイムス』のウェブサイトによると両社は昨年11月に「台風・災害時における新聞配達に関する協定」を締結。今月初めの台風では暴風警報発表中の配達の原則中止を決めたという。昔、新聞配達をしていた身としては「今頃?」という感想もなきにしもあらずだが、一歩前進は歓迎したい。(原田成人)