週刊金曜日 編集後記

1348号

▼校了日前日の10月4日、岸田文雄新内閣が発足し、次期衆議院選挙は10月31日投開票ということが伝えられた。内閣支持率が3割をきって終幕した菅義偉政権下でも、さんざんこの選挙日程が駆け引きの材料に使われてきた。野党が求めてきた予算委員会は開催されぬまま、解散総選挙となる。
 岸田新内閣は、竹中平蔵氏が民間議員を務める首相官邸の成長戦略会議を廃止する方向を示すなど、自民党の「変化」をアピールしているが、まだ何かをなしたわけではない。こうしたアピールでごまかし、ボロが出る前に選挙をしてしまいたいということだ。第二回目の中島岳志さん責任編集企画で出てくるように、岸田新内閣は安倍・菅政治をひきつぐものでしかない。再び自民党政権が続けば、「変化」は訪れないどころか、悪化の一途だろう。野党共闘が示す「新政権」構想が、自民党政権から抜け出す「もう一隻の船」になるよう、共闘を探る企画は選挙公示ギリギリまで続ける。(渡部睦美)

▼「投書のページを担当してもらえませんか」。そう言われて編集部に来たのが昨年2月だった。
 数カ月やってみて、もう少し活気のあるページにしようと思い、3ページだったのを4ページに増やしてもらった。「投書」「論争」という名前を「言葉の広場」「論考」に変えた。川柳は毎回3句の掲載を5句に増やし、月ごとの「最優秀作品賞」も設けた。
 一番の楽しみは、投稿者のみなさんとのやりとりだった。いろんな人生があって、それが文章に反映されている。とても良くわかった。メール、ファクスのない方にはゲラを速達で送り、電話でやりとりした。投稿者のみなさんからは、励ましのメール、手紙、葉書をいただいた。すべてファイルに保存している。私の「宝物」だ。
 残念かつ淋しいが、この号で私の担当は終わる。10月から電子メディアなどを担当するためだ。でもお別れではありません。いつでも連絡してください。(佐藤和雄)

▼先週10月1日号48頁、水俣病事件の関連書籍リストを読んだ複数の知人から「1冊ならばどれがお勧め?」と質問されました。以下は私個人の見解ですが、映画を観た人には、9月に刊行されたばかりのユージンとアイリーンの評伝『魂を撮ろう』(石井妙子著・文藝春秋)。水俣病事件についても的確に丁寧に書かれており、入門書として好適です。
 ある程度知識をお持ちの方には、8月刊行の『水俣病事件を旅する』(遠藤邦夫著・国書刊行会)。あまりに多くの気づきを与えてくれるので、読書ノートを作りはじめてしまいました。
 そしてお時間のある方には『水俣病の民衆史』(岡本達明著・日本評論社)。全6巻を順番に図書館で読みましたが、たとえば三つの村の形成史の差異、漁法の特徴、それらが水俣病以降に与えた影響など、著者の考察の繊細さ、緻密さ、明晰さに何度も心打たれました。(植松青児)

▼「おっと電話だ」。スマホを手に取ると「非通知設定」だった。ためらいつつ応答ボタンを押してみた。すると自動音声の世論調査ではないか。衆院選の支持政党や予定候補者についての質問だった。
 自民党の総裁選が終わったばかりだが「表紙が変わっても中身が変わらない」安倍・菅・岸田政権では希望を持てない。政権交代を目指そう。衆院選は変革のチャンスだ。それにしても世論調査が携帯電話にかかってくるとは。個人情報の漏洩が心配になった。
 そもそも普段は出ない非通知に出てしまったのはスマホの使用頻度が高まったからである。社内の会議をオンラインで行なうことになったためスマホでZoomを使っている。そしてLINEの通知を見ると店の営業再開のお知らせだ。お誘いに応じたいがやめておく。なぜなら団地のエレベーターが改修工事とやらで、よもやよもやの停止中なのだ。酔って帰ったら5階の自宅まで階段を上る自信がない、ふがいなし。(原口広矢)