1356号
2021年12月03日
▼書くべき人が、書くべきことを、使命感をもって書き尽くした。そんな印象をもった。金平茂紀さんの最新刊『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』のことだ。
金平さん、こういってはなんだが、これまでは書けない話が多くて、鋭い批判を聞かせて貰っても、細部まで含めて載せることができなくて残念な思いをしていた(すみません)。しかし今回は違う。当事者への取材も尽くし、制作現場でなにがあったのか、きっちりと記録を残してくれた。知りたいと思っていたことがわかったし、2代目筑紫哲也さん担当編集者としては嬉しい。そう、金平さんの担当もさせてもらっていたもの。
夜11時からの番組、日中、編集長の金平さんが電話で内容の打ち合わせをする。一応トップニュースはこれこれ、特集はこれ、と申告をする。すると電話の向こうで「ニコニコとしているのがわかっちゃう。うれしがっているのがわかったりするんですよ」。そして筑紫さんは、番組ギリギリまでライブやら観劇に出かけてしまう。君臨すれども統治せずでボトムアップの番組作り。なぜあんなに自由な発想の番組ができたのか、今回お話を伺い、少しだけわかった気がした。(小林和子)
▼東京オペラシティ・アートギャラリーで開催中(今月19日まで)の「和田誠展」に行ってきた。子ども時代の作品まで見ることができ(今も残っていることに驚き)、中学生のときに観たディズニー映画『白雪姫』の色彩や音楽、アニメーションの技術に感激し、パンフレットを参考に紙粘土で作った「七人の小人」なんて、売り物かと思うぐらいのできだった。
たばこ「ハイライト」の試し刷りも置いてあり、本人が第一候補にしていたデザインや色違いも見ることができる。父が昔、「ハイライト」を吸っていたので、なつかしい。圧巻はポスターがズラリと貼られた巨大壁。芝居からコンサート、企業広告などなど、端が見えないほどのスペースにびっしり。反対側の『週刊文春』の表紙も一つひとつ見入ってしまう。
そして『話の特集』コーナー。編集長の矢崎泰久さんが和田さんとはじめて作った外国人観光客向けの雑誌『エルエル』(テスト版)を拝見。これが『話の特集』創刊につながったと矢崎さんがいつも話していた。ちなみに本誌に引っ越してきた『話の特集』「なまくらのれん」には、いつも和田さんが描いた小室等さんがいま~す。(吉田亮子)
▼今はもっぱら本誌「きんようアンテナ」担当編集者として働く私ですが、もともとはフリーランスライター。なので「アンテナ」に毎回ご寄稿をいただくフリーの方々のご苦労には自身も何かと身につまされます。
たとえばデモや事件現場などの取材先で警官から「どこ(の会社の記者)?」と聞かれ、「フリーです」と答えた途端「ああ~」とバカにしたように言われたり、先へ進むことを妨げられたりした場面が何度あったことやら。腕章をまいた放送局や新聞社の記者たちは、その隣を涼しい顔で通り抜けていくのにね(ヘイトデモとカウンターの攻防を取材していた頃には警官から「どこ?」ではなく「どっち?」と聞かれましたが)。
それでも職種として認識されているならまだ良し。以前に北関東の某市の市議会議員さんに名刺を渡したら、肩書をしげしげと眺められた末に「ランスライターって何?」と聞かれ「そこで切らないでくれ~!」と思わず膝から崩れ落ちそうになったものでした。そんなわけで、たぶん今も各地で日常的に繰り返される苦難にめげず取材に奔走するフリーの方々には本当に頭が下がる次第。(岩本太郎)
▼新型コロナウイルスの新規感染者が減っている。だが、昨年の年末から年始にかけて急拡大したことを思えば油断は禁物。緩みがちな感染対策を怠らないようにしたい。日常生活を取り戻しつつあるが、弊社は、再拡大の備えもありリモートワークの環境を整備している。ついては、業務部も働き方を見直すことになった。書籍・雑誌の発送作業は出社しなければできないが、その他の業務を工夫して在宅で行なう。たとえば、取引先とのやりとりはメールで済ませ先方さえよければ帳票類もファイル化してメールする。リモートワーク成功の鍵は、どれだけ電子化をすすめて紙を減らせるかだろう。
そんななか、思わぬところでペーパーレスを実感した。昼間利用している飲食店のショップカードがスマホ対応になったのだ。これまでは、紙のカードに店員さんがスタンプを押してくれていたのだが、これからはスマホがカードになる。つまり、専用アプリをダウンロードしてカウンターに備え付けのQRコードを読み取ると、画面のカードにスタンプが押される。姑息なマイナポイントには到底及ばぬが、特典獲得を目指してささやかに、ためる。では、当欄はこんなところで。(原口広矢)