1362号
2022年01月28日
▼「私も最初は知らなかったのよ」。90歳の山田火砂子監督がそう語ったように、そして北原みのりさんが本号で指摘しているように、その豊かな実績に比べてあまりにも語られていない矢嶋楫子。
山田監督は「渡米当時は、お札になる津田梅子よりもたくさんの新聞で記事になったのよ」とも語った。実際、今回調べてみると、在日米国大使館公式マガジンの記事に「矢嶋楫子の貢献―女性の参政権運動を通じた日米交流」として「当時日米の女性の架け橋となった人物であり、両国で一目置かれる存在」「遥か先を常に歩いていた矢嶋楫子は時代を超えて現代を生きる私たちに道標となるべく大切なことを伝えようとしていたのではないだろうか」(2020年8月25日付)などとあり、米国では日本よりもずっと評価されていることがわかる。女性の権利に対する日米の意識の差を見る思いだ。
『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』は、2月から全国各地で上映される。今も男尊女卑がまかり通るこの国に、一陣の風を!(山村清二)
▼社会問題を列挙する本誌について「大事な指摘なのはわかるが、問題ばかり続けて読んでいると気分が暗くなる」という感想をいただく。その通りで重要なご指摘だ。
先に光が見えれば道が暗くても歩いていけるが、ずっと暗闇では立ちすくむ。本誌に必要なものを見抜かれたのだろう。新連載を始めるにあたり、田中優子さんは「暗い話に終わらないよう、希望の持てる展開にしたい」と方向性を示された。ただ、それはいわゆる「前向き」な内容とは異なる。
「『前向き』はまるで戦場での激励のようだ。後ろを振り返るな、ひるむな、逃げるな、ひたすら前に向かって明るく前進せよ、そうすればその先にご褒美が待っているというわけだ」(『未来のための江戸学 この国のカタチをどう作るのか』小学館101新書)と、「前向き」という言葉が持つ「直線的発想」を警戒する田中さん。「直線的」な政治から脱し、柔らかな社会をつくるため「これからどうする?」と問う。答えを見つけるのは私たち自身だ。(宮本有紀)
▼市内に3カ月以上住む18歳以上であれば、国籍を問わず住民投票での投票資格を持つとした東京・武蔵野市の住民投票条例案。昨年12月21日の市議会本会議で否決された。反対への大きな流れをつくったのは、自民党による「外国人の広義の参政権につながる」という主張である。
本会議での自民党市議の反対理由を説明する言葉を聞きながら、私は1999年10月の自民・自由・公明の3党合意を思い出していた。合意書では「永住外国人の地方選挙権付与」について、「3党において議員提案し、成立させる」とある。当時の小渕恵三首相ら政権中枢が公明党の要望を受け入れたものと記憶している。
当時から自民党内には反対論がくすぶっていた。それが次第に強まり、民主党政権時には法案提出の動きに対して「日本を崩壊へと導く『天下の悪法』」というキャンペーンを繰り広げるまでに至ったのである。公明党の幹部のみなさんに聞いてみたい。よくこんな政党と連立政権を組んでいますね、と。(佐藤和雄)
▼「今期のドラマは何を見てますか?」。金曜日ドラマ研究会設立を目指す部員Sが声をかけたのが先週のこと。立ち話に参加した4人全員の評価が高かった月9「ミステリと言う勿れ」。人気コミックをドラマ化したもので、菅田将暉さん演じる主人公が膨大な台詞で常識に疑問を唱え、見ている私たちは溜飲を下げる。「わかってないあいつに見せたい」と思うこと間違いなし。押しつけがましくないのは、主人公がすねかじりの学生というニュートラルな立場なこともあるように思う。
ニュースサイト編集部が舞台の「ゴシップ」も4人全員見ていたが、評価はこれからという感じ。個人的には空気が読めず人の心がわからない主人公が変に成長せずそのままでいてくれるかどうかに注目している。同様の期待は「恋せぬふたり」にも。「アロマンティック・アセクシュアル」の2人のまま恋に落ちずにいてほしい。
さて、「皆さんのおすすめドラマはなんですか?」。よろしければ投書欄に投稿下さい。(志水邦江)