週刊金曜日 編集後記

1392号

▼安倍晋三元首相の「国葬儀」を行なう理由について、岸田文雄首相は8月31日の記者会見で四つの理由を述べました。TBSラジオのニュース番組「荻上チキ・Session」で同日、荻上チキさんがこうまとめています。「長くやったから。よくやったから。海外からも人が来たいと言っているから。殺されてしまったから」

 わかりやすい。いずれも「国葬」の理由になっていないですね。

 同日夕方、国会前であった抗議行動には約4000人が集まり、「国葬を民主主義の葬式にしてはいけない」「閣議決定で何でも決めるな」「国葬で税金を使うな」などと声を上げたそうです(「東京新聞Web」8月31日)。

 安倍元首相と統一教会との関係について岸田首相は「ご本人が亡くなられた今、十分に把握するのには限界がある」と語っていますが、秘書や親しい議員などからの聞き取りなど方策はいくらでもあります。政権の本質が可視化されつつありますね。(伊田浩之)

▼1ページで、と言わなければ良かったと後悔している。本号19ページの自分の記事だ。紙幅の制約で書けないことが多すぎた。

 一つだけ、補足しておきたい。記事中、野中広務氏が「国際勝共連合の顧問弁護士が、(竹下派所属の)Aだ。Aが会長(=金丸氏)に入国実現をお願いし、会長が法務省に働きかけた」と明かすくだりがある。実はAとは、のちに法務大臣も務めた保岡興治氏である。保岡氏と統一教会の深い関係を示す傍証はいくつかある。

 念のために国際勝共連合に事実関係の確認を求めた。8月31日、広報担当からメールが届き、魚谷俊輔事務総長からの回答文が添付されていた。そこには「保岡興治氏が弊団体の顧問弁護士を務めたという事実はありません」と書いてある。すでに故人となった野中氏や保岡氏に改めて確認するすべはない。加えて、金丸氏が保岡氏の要請だけによって法務省に働きかけたとも思えない。よって匿名にさせていただいた。(佐藤和雄)

▼なぜ入管で人が死ぬのか。なぜこんなことが起き続けてしまうのか。入管の問題を考える時に、「なぜ」という問いは常につきまとう。この問いを題名にしたパンフレットを市民団体「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合」(入管や難民問題に関わる団体などが昨年12月に結成)が出した。

 昨年3月のウィシュマさんの死亡事件にまつわる入管庁(出入国在留管理庁)の「調査報告書」では、改善すべき問題点として「医療体制の不備」などが挙げられた。しかし、死亡事件が繰り返し起きたり、収容の長期化や施設での虐待が起きたりする原因は、「被収容者の在留の意思をくじき帰国させることを何よりも重視し、人命・人権は二の次という送還方針」にあるとパンフレットは述べている。約20年の入管政策を分析しつつ、その問題点を指摘しているので、入管問題を明瞭に理解できる。団体のサイトでダウンロードできる(https://www.ntsiminrengo.org/なぜ入管で人が死ぬのか)ので、読んでみてほしい。(渡部睦美)

▼新型コロナが始まって以来、病院や施設に入院・入居している人との面会が禁止され、双方困っている――というニュースをよく見聞きしますが、まさか自分も同じ体験をするとは思いませんでした。

 7月に家人が入院しました。診察、即入院となったため、何の準備もできないまま入院病棟へ。看護師さんに「着替え類はどうすればいいんですか?」とたずねると、「アメニティセットを購入してほしい」とのお返事。私物の持ち込みなども厳しく制限されました。面会禁止なので、物の受け渡しは看護師さんの手を介さなければならず、「私たち(看護師さんたち)が大変だから」というのがその理由で、確かにそうですね。看護師さんたちはただでさえ大変なのに、コロナで神経を使い、さらに物の受け渡しもとなると、本当に負担が増えてしまいます。

 入院した家人によると、いったん病棟に入ると他の階への移動も禁止だったそうで、コロナ前の入院とは全然違うんだと実感しました。(渡辺妙子)