1394号
2022年09月30日
▼エリザベス"女帝"の「国葬」にはいち早く出席を決めた天皇・皇后"夫婦"が、「アベ国葬」にはいち早く欠席を決めたことは、世論への迎合もあるだろうし、「立憲君主制」とか「象徴天皇制」とかいう名での天皇制維持を図る取り巻きの「政治」そのものでもある。前天皇が「日の丸」「君が代」について「強制になるということでないことが望ましいですね」(「自主的に掲げて歌うことが望ましい」と言ったにすぎない)と政治的発言をしたとき、少なからぬ自称「左翼」「リベラル」「フェミニスト」たちが雪崩を打って礼賛していった「ニッポンの光景」は記憶に新しい。
英帝国の植民地支配と王室への反乱、共和制への移行の動きを報じない大手マスコミの社長さんたちが、アベ国葬に集団参拝することも記憶と記録に刻み込もう。残念ながら『週刊金曜日』にも肩書が好きな人がいて権威主義を脱し切れていない。私は社長と編集長以外の役職は全廃すべしと主張しているが、「内なる天皇制」の克服の難しさよ。(本田雅和)
▼13年前、勤務していた新聞社の新潟支局の道路向かいに、横田めぐみさんが北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に拉致されたその日まで通っていた中学校がある。そこから徒歩10分ほどの海岸近くに、「この付近で、当時中学生であった横田めぐみさんが、北朝鮮に拉致される事件が発生しました」と、情報提供を呼びかける新潟県警の看板が立っている。
海岸から眺める日本海の夕日は例えようもなく美しい。だがこの場所からめぐみさんが小船に押し込まれ、連れ去られたと思うと、いつも物悲しい思いに駆られた。
北朝鮮が拉致を認めた日朝首脳会談から20年。拉致問題解決の糸口は見いだせず、めぐみさんの父滋さんら親たちが相次いで亡くなった。拉致問題が未解決になっていることについて、岸田文雄首相は先日、「痛恨の極み」とコメントした。「岸田首相ならなんとかしてくれる」という期待感は全くわいてこない。進展がなく歳月が流れたとしても、政治家たちは判で押したように「痛恨の極み」と言い続けるのだろうか。(小川直樹)
▼「小林さん、隅田川で泳いできたんですか!」。東京・中央区の新事務所に足を踏み入れるなり、同僚の痛烈な一言で迎えられた。相変わらず口さがない××だ、フン! と心の中で毒づいてみたものの、頭のてっぺんから足の先までずぶ濡れだ。台風接近による悪天候には愛用のカッパも役立たなかった。
自転車通勤を視野に入れて、自宅からの経路は実地で確認ずみなのだが、甘かった。信号待ちが許せなくて脇道に逸れていった結果の迷子......。最後は土砂降りに霞むその姿に誘われて(?)、強風に倒されそうになりながら越えてしまった永代橋(そこからは江東区じゃないか)。結局、所要時間の倍以上をかけて辿り着いた。
ちなみに会社のある日本橋浜町界隈はオフィス街ではあるが、近隣には1774年、杉田玄白・前野良沢らの『解体新書』を出版した須原屋もあったときく。時世を考えると、改めてその偉業に心を動かされる。本の街、神保町を離れても、挑戦する出版文化の志はそのままに、といきたいものだ。(小林和子)
▼9月16日を最後に『週刊金曜日』は東京・千代田区の神保町から中央区の日本橋浜町に引っ越した。2011年12月から11年以上過ごした街から離れるのはかなり名残惜しい。移転日が迫るにつれて「さよなら神保町」を合言葉に神保町を食べ尽くすランチタイムを過ごす面々。
社内でヒアリングしたところ、一番人気は「森のブッチャーズ」。ここ数年はコロナ禍で外食もままならなかったけれど、会社から徒歩0分という立地に加えて、テイクアウトもできるボリューム満点のローストビーフランチはまさに鉄板。本誌の何ページかは確実に「森のブッチャーズ」の肉でできている。そういえば炭火から立ち上る煙で2階席はかなりスモーキー。記事をかみしめていただければ、しっかりとしたかみ応えに加えて力強い風味も感じていただけるのではないでしょうか?
こんどは浜町でどんな料理が「金曜日」をつくるのか。どうぞお楽しみに。またレポートします。(志水邦江)