週刊金曜日 編集後記

1396号

▼10月4日朝、北朝鮮が発射したミサイルが日本上空を通過するということで、5年ぶりというJアラート(全国瞬時警報システム)が発令され、朝からニュースは「国民保護に関する情報」一色という異様な光景を目の当たりにした。さまざまな問題も発覚し、Jアラートにまったく意味がないということもあらためて確認した。

 一方で同じ日、在日コリアンの友人から「怖い」という連絡が。よく聞くと、朝鮮学校などへの脅迫電話がここ数日で増えているという。ミサイル発射報道があると、それに比例して、抗議や脅迫の連絡が増えるのは毎回のことだが、慣れるものではない。こうした騒動に疲れたり、自己の存在を強く否定されたような気持ちになったりして、保護者や学生が学校から離れていく傾向もあるという。先日、東京の赤羽駅の横断幕に「朝鮮人コロス会」と書かれた落書きが見つかったという報道もあったが、こうしたことの一つ一つが本人たちにどれほどの不安や恐怖を与えているのか。日本社会はいまだに無自覚で冷酷だ。(渡部睦美)

▼「言葉の広場」で、「薬を飲まずに生活習慣病を改善」というご投稿がありました。金曜日出版の『ひとめでわかるのんではいけない薬大事典』(浜六郎著)で特に生活習慣病の薬の摂取が好ましくないことを確認し、実践したところ改善されているとのことです。

 ある精神科医師から、「薬を減らすことで快方に向かうことが少なくありません」という話を聞きました。病気・症状の多様化や治療薬の副作用を抑えるなどで数十種類の薬が出されていた患者もいたそうです。

 先ごろ、私の身内でも同様のことがありました。救急医療の医師から「低ナトリウム血症で、放っておいたら危ないところでした」と告げられました。薬の作用が大きいとのことで、退院後は主治医の指導のもと、13種類服用していた薬を一ケタ台に減らしたところ、それまでの薬依存症も抑えられ、体調も回復しつつあります。

 それにしても、世の中には十分に診察もしないで、やたらと薬を処方する医師がいます。気をつけなければいけません。(秋山晴康)

▼〈人心しづかに菊の節句かな 召波〉。10月4日は太陰太陽暦(旧暦)の9月9日。重陽の節句でした。菊の節句とも呼ばれます。

〈中国の陰陽思想では、奇数は縁起のよい「陽数」とされ、3月3日や5月5日など奇数が重なる日を祝う風習がある。なかでも陽数の最大値である9が重なる9月9日は重陽と呼ばれ、大変めでたい日と考えられてきた〉(『知恵蔵mini』)そうです。

 私も、「水菜とエノキと食用菊のおひたし」「なめこと菊のおろし和え」などを作って、菊の花びらを浮かべた「菊酒」で楽しみました。菊風呂にも入ったので、邪気をしっかりと払えたと思います。

 太陽暦(新暦)の9月9日にも食用菊を探し回りましたが、まだどこにも売っていませんでした。田舎の実家では、桃の節句も七夕も月遅れで祝います。やはり、その方が季感が合っているからでしょう。太陰太陽暦は使われなくなりましたが、昔からの習慣の意味やそこに込められた心は、受け継ぎたいものです。(伊田浩之)

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 移転して4週目、ここ浜町にも慣れてきました。「神保町お別れの会」がはるか昔のことのようです。いや、正直言うと泥酔したため、あまり思い出せませんが。浜町から西に歩くと人形町です。神保町は名店が多かったけれど、人形町も「人形町今半」「玉ひで」など引けをとりません。そして浜町の東に流れる隅田川を越えてみたら、対岸には何があるのかな。「この道を行けば どうなるものか」「危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし」 「迷わず行けよ 行けば分かるさ」。アントニオ猪木氏が引退試合で披露した詩の一節でした。哀悼の意を表します。(原口広矢)