週刊金曜日 編集後記

1402号

▼寺田稔総務相が「政治とカネ」めぐる問題の相次ぐ発覚で辞任した。この1カ月弱の短期間で、第2次岸田内閣での閣僚辞任は、統一教会問題の山際大志郎前経済再生相、人命を軽んじた不適切発言の葉梨康弘法相に続く、3人目だ。

 彼らを事実上更迭したことになった岸田文雄首相は、自身の任命責任について「当然感じている」「重く受け止めています」などと繰り返し発言したが、その後の行動が伴わなければ、言葉の軽さだけが際立つ。早急に責任をとって退陣・内閣総辞職するべきであろう。

 作家の青木俊氏は自身のツイッターで以下のように呟いた。〈アベの頃から「責任」は"感じる"もの、"受け止める"ものになってしまった。「責任」は"果たす"もの、"取る"ものだ。「責任を重く受け止め」はまだ文章の途中。重く受け止め「だからどーする」がないと完結しない〉。

 さまざまな疑惑や不祥事の弁明のたびに「責任を痛感」という言葉を繰り返し、どーすることもなく、開き直るのがアベ政治の常套手段であった。無責任の極みであるが、安倍晋三氏亡きあともそれが続いている。(尹史承)

▼当時、ビザが切れたままブラジルに滞在していた知り合いは、国を追い出されるどころか、「不法滞在のおかげ」で永住権を手にした。次期大統領に返り咲いたルーラ氏の政権下のこと。"納税もせず管理できない人たちが増えすぎると政府も困るので、そういう人間をあぶり出すために措置があるみたい。大統領選を控えた候補の人気取りとも言われているけど"と彼女は教えてくれた。

 人権擁護団体らがバックアップする法的措置ではあるが、(どこかの国とは比較にならない)その懐の深さに感動したことを覚えている。パートナーはその一発逆転劇を羨む。正規のビザをもっていたばかりに彼はその対象から外れてしまったのだから。彼女はそれからもたくましく現地で暮らしている。飲食業を営んでいた海外経験ゼロの母親も店をたたんで娘の元へ。この母にこの娘ありか――。

 今週号ブラジル記事のCOP27で演説するルーラ氏の写真は筆者のアドバイスによるもの。通信社からなかなか配信されずじれったかったが、同氏の姿勢を象徴しているようで、待った甲斐があったとひとりほくそ笑む。(小林和子)

▼今週号は『オレの記念日』の金聖雄監督と『百姓の百の声』の柴田昌平監督、2人のドキュメンタリー映画監督が登場。私も、もう1人(もう1本)、紹介したい。

 じつは本誌では昨年12月24日号ですでに取り上げた、土井敏邦監督の『愛国の告白 沈黙を破る・Part2』(掲載時は『沈黙を破る・Part2』)だ。パレスチナ地区での占領者としての兵役体験が個人と社会のモラルを崩壊させている――元イスラエル兵士らによる非人道的な攻撃の告発は、ロシアのことを思わずにはいられなかった。これは裏切りなのか、愛国とは何かと、映画は問いかける。

 完成時は3時間55分の作品だったが、このほど2時間50分に編集、12月9日(金)まで東京・新宿K's cinemaで劇場公開中(全国順次公開、http://doi-toshikuni.net/j/aikoku/)。アフタートークには在日元イスラエル兵のダニー・ネフセタイさんやジャーナリストの金平茂紀さん、俳優の渡辺えりさん、などなどが。土井監督の34年におよぶパレスチナ・イスラエル取材の集大成をお見逃しなく。(吉田亮子)

▼書店の店頭に来年のカレンダーや手帳が並ぶ季節になった。思い返せば事務所移転でてんやわんやだった今年。移転から2カ月が過ぎ、ようやく浜町暮らしにも慣れてきた。落ち着いて来年の観劇手配にいそしめることに感謝の毎日を過ごしている。

 そんな年の瀬に、以前この欄でお知らせしたことのある「財津昌樹と山口マオのカレンダーを媒体にして言いたいことを言ってしまう展」が今年も開催される。回を重ねて第32回。「Final」と謳われているのがやや気がかりだ。2023年のカレンダーにも政治への警鐘とともに、見る者へのちょっぴり耳の痛いメッセージ、そしてエールも込められている。色とりどりの展示に触れるとメッセージがよりビビッドに伝わってくる気がして、毎年の楽しみだ。

 展示会は12月3日(土)~7日(水)12時~19時30分、東京・笹塚ボウル4Fギャラリー(京王線笹塚駅徒歩2分)で開催。展示会、カレンダーの問い合わせは070・3289・0311まで。定期購読の方は今週号に同封のチラシをご覧下さい。(志水邦江)