週刊金曜日 編集後記

1403号

▼11月25日号の「きんようアンテナ」のページで、デモクラシータイムス同人であり、ジャーナリストの山田厚史さんに、元『朝日新聞』編集委員の早野透さんの死去について書いていただいた。

 素晴らしい文章だったと思う。山田さんにお願いして良かった――。心の底から、そう思った。同時に、自分にはとてもこうは書けなかった、とも。

 私が、『朝日新聞』の地方支局から東京本社の政治部に異動になった時、早野さんは政治部のデスク(次長)だった。「佐藤くん、こんな原稿を書いていちゃ、だめだぞおう」。そう言いながら、私の鉛筆書きの原稿を、左手に握った消しゴムでどんどん消しながら、右手の鉛筆で書きかえていったのだった。厳しいけれど、優しかった。

 数年前のことだ。私があるところで山田厚史さんに初めてご挨拶をしたとき、そこに早野さんもいて横から「佐藤くんは僕の政治部の後輩で、すごく優秀なんだ」と言ってくださったので、ひどく驚いた。もちろんかなりのお世辞である。でも嬉しかった。誇らしくも思った。(佐藤和雄)

▼『新海誠論』藤田直哉=著(作品社)を読んだ。藤田さんとは以前、白井聡さんとの新宿での公開対談の打ち上げの席で話をしたことがある。「オタク」を体現し、理解し、表現できる新世代の批評家が出てきたことを感じた。その後『シン・ゴジラ論』、『攻殻機動隊論』を上梓、そして『新海誠論』。

〈「昔はよかった」「戻りたい」と嘆かず現状の現実を肯定し、次世代とともに「危機の時代を健やかに生きる」覚悟を決めるための本だと思います。〉(著者のTwitterより)。シビれますね、これは。

 終章で「安倍晋三首相暗殺事件以後」の観点から、本書で論じたいくつかのポイントも再検討している。即日、公開中の新海誠監督 長編アニメ最新作、映画『すずめの戸締まり』を観に行った。

「創造」とは、新しくつなぐこと。人類は未来に見え隠れする巨大な「危機」を回避し、世界をつなぎなおすことができるだろうか。

 連載「祀りをたずねて」が30回を迎えた。多くの「祀り」を知るにつけ、世界をつなぐ見えないチカラというものがどこかにあるような気もする。前向きに未来を追悼し、受容したい。(本田政昭)

▼犬猫と飼い主の関係について、互いの高齢化は無視できない問題です。「年が年だから、もう動物は飼えない」という声もよく聞きます。飼い主が亡くなったりしたとき、残された犬猫はどうなるか。引き取り手がいない場合は、殺処分になることも少なくありません。

 知人のライターから「飼われていた方が入院して(その後死去)、手放さざるを得なくなった親子犬がいる。子犬は長野の里親のところにもらわれていったけれど、夫妻犬は行く先が見つからないので誰かいないかな?」と連絡をもらったのが2011年10月。

 伯父夫妻が前々から犬を欲しがっていたため、さっそく預かり先の動物病院を一緒に訪ねました。そのとき院長先生から「父犬は心臓に病があり、手がかかるからうちで看るよ」と言われ、伯父夫妻は母犬を引き取りました。

 あれから11年。その愛犬は11月18日に旅立ちました。翌日が18歳の誕生日でした。父犬は病院ですでに看取られ、子犬も逝ったと聞いています。「向こうでみんなに会えるから良かったね」。家族との再会を喜んでいる姿が目に浮かびました。(秋山晴康)

▼昨年からわが家では家電がことごとく壊れ、買い換えが続いております。去年はエアコン、今年はテレビと洗濯機。出費もかさむしSDGsじゃないし......、とは思うものの、仕方がありません。

 しかし10年超の洗濯機が壊れ、新しい洗濯機が来て初めて洗濯をしたとき、私は猛烈に感動しました。どうして? 布袋がなくなっていたからです。糸くずをためる布袋、こまめに掃除したほうがいいとわかっていながら、面倒くさくて放置した結果、糸くずが洗濯槽に逆流したり、ヘドロ化したりという経験、お持ちじゃないですか? 新しい洗濯機では薄いケース状になっており、ふたを開けてそこにたまった糸くずを捨て、再度ふたを閉めケースごとセットすれば終わり。古びた機種から、最新機種に一気にジャンプしたときのカルチャーショックはすごいです。

 先日この欄でプロレスのことについて書きましたところ、プロレスファンの読者の方から、プロレスグッズをいただきました。ありがとうございます。御礼申し上げます。なんだか恐縮でございます。(渡辺妙子)