週刊金曜日 編集後記

1404号

▼サッカーW杯が始まった。大会は盛り上がっているが開催国カタールの問題が物議を醸している。法律で同性愛を禁じた、また、W杯関連工事で多くの外国人労働者が亡くなったとされ、これらの人権侵害に対しピッチ上で欧州の選手たちが抗議の意思を示した。

 初戦日本は優勝候補のドイツに逆転勝ちするという最高の滑り出しをみせた。前半PKで失点、前半終了間際に追加点を決められて万事休すと思いきやオフサイドで取り消しに。僅差で折り返すと後半は反撃に転じた。選手交代し、布陣を変更すると攻撃のテンポがよくなり、後半30分に同点ゴール、38分に追加点を奪い、その後猛攻をしのいだ。それにしてもアディショナルタイム7分は長かった。

 だが、コスタリカ戦は、攻めあぐねた日本とは対照的に数少ないチャンスをものにしたコスタリカが勝利。試合前は日本優位だとみられていただけに、何がおこるかわからない、W杯の怖さだ。そしてグループリーグ最終戦。なんとスペインにも逆転勝ちし、決勝トーナメント進出を決めた。ここまではブラボーだぜ。(原口広矢)

▼闇の中の人に気づくのに、しばらく時間がかかった。シマコ・コブニジは、ベニヤ板を打ち付けただけの窓もない小屋の奥で、毛布をかぶって寝ていた。甲状腺障害を患い、両足も痛くて座っていられない。当時62歳。13歳の時、故郷ロンゲラップ島で核実験の死の灰を直接浴びた被曝者であることは、のちに全島民を強制退去させた米国が認定しているが、そのことは近所の人も知らなかった。マーシャル諸島共和国の首都マジュロから飛行機で1時間半。クエゼリン島の米軍基地に降り、そこからボートで半時間。イバイ島のスラム街の片隅に、彼女はいた。

 20年前、新聞記者だった僕をシマコに会わせるために現地に案内してくれたのは、早稲田大学院生だった竹峰誠一郎さん。ヒロシマ・ナガサキだけが核被害ではないと憤り、現・奈良大学教授の高橋博子さんとともに「グローバルヒバクシャ」研究会を立ち上げた若き学究も、今や大学教授となり、今号「フクシマ汚染水/太平洋諸島の眼差し」で久しぶりに一緒に仕事ができた。シマコは今どうしているのか?(本田雅和)

▼「Go To Eat キャンペーン」が実施されている。東京では、1万円で1万2500円分のアナログ(紙)食事券を買うことができる。スマートフォンを利用した申し込みでは、専用サイトに電子メールアドレスを入力すると、電子引換券が送られてきて、都内各所の食事券販売店で購入できる。だから、持っているメールアドレスの数だけ申し込めるのだと聞いた。

 無料のメールアドレスを提供するサービスは多い。仮にアドレスが四つあれば四つの引換券を入手できるらしい。明らかに不合理な仕組みではないか。引換券一つで2セット(2万円で2万5000円分)まで買えるのだが、そもそも今日明日の食費に困っている人たちに"先払い"する余裕はない。

 金持ち優遇制度は多い。「全国旅行支援」もそうだ。「ふるさと納税」も、所得が多い人ほど得する(多く"納税"できて返礼品を多くもらえる)仕組みとなっている。

 孔子は「苛政は虎よりも猛し」(『礼記』)と言った。苛酷な政治が与える害は虎の害よりもひどい、という意味だ。困っている人々の声を聞かない現政権の罪深さに怒りを覚える。(伊田浩之)

▼商品購入やサービス利用をするとお店のカードにハンコを押してもらい、全てのマスが埋まると割引になったりプレゼントをもらえたりするシステムを結構活用している。スマホのアプリではなく紙のカードというアナログの「ポイ活」なので、財布がお金ではなくカードでふくらんでしまうのだが、パン屋さんは食パンやフランスパン型のハンコ、ケーキ屋さんもモンブランやショートケーキ型のハンコを使ったりしていて、見た目も楽しめるのがいいところ。

 お気に入りのクリーニング店では、すごろく形のカードになっていて利用金額に応じてマスが埋められ、全部埋まると「あがり」みたいに500円玉を戻してくれるので、ゲームみたいで面白い。

 ところが、数年前から紙のカードをアプリに変えるお店が増えた。個人情報を入力してまでも使いたいサービスか考えてポイント集めをやめたお店もあるが、生活上仕方なくアプリをダウンロードしたサービスもある。スマホは忘れにくいし嵩張らない利点があるのはわかるが、必要以上に個人情報が取られず味のある紙のカードも残してほしいなあ。(宮本有紀)