週刊金曜日 編集後記

1406号

▼ある人に教えてもらい、政府の財政制度等審議会が11月29日にまとめた来年度予算編成に関する「建議」を読んでみた。そこに今回の防衛費増に関する重要な記述があるという。以下、引用する。

〈現在の中期防衛力整備計画における「防衛力整備の水準」の規模は5年間で約27・5兆円であり、平成を通じて20兆円台だったが、これが次期中期防衛力整備計画において、30兆円を超えて相当程度増額することになれば、それ自体、歴史の転換点と言い得る。〉

 来年度からの5年間で防衛予算は43兆円に膨れ上がる。「歴史の転換点」どころではない数字だ。

 財政制度等審議会は「他国からの侵略に対しては、国家として立ち向かうための財政余力が不可欠」とも指摘している。口ごもったような言い回しだが、経済・財政を破壊するような軍事費増が本当に国を安全にするのか、という疑問を投げかけているように聞こえる。(佐藤和雄)

▼この季節になると、今は亡き俳優・山谷初男(はっぽん)さんのことが思い出されてなりません。2017年12月、東京・浅草の木馬亭で「寺山修司は生きている!」をプロデュースし、講談師の田辺鶴英さん、田辺銀冶さんらとのコラボ公演を行ないました。

 山谷さんは、先ごろ亡くなられた崔洋一監督とも親しく交流し、あるネット情報では「(はっぽんの)由来は新宿ゴールデン街で飲んでいた崔洋一らから呼ばれていた愛称」とあります。

 秋田県角館で生まれた山谷さんは、本名の「八男」から地元では「はっぽ」と呼ばれていました。劇団俳小に参加したとき、それを聞いた小沢昭一さんが、「じゃあ、これからは『はっぽん』と呼ぶから」。"名付け親"は小沢さんだったそうです。「秋田の空の下で死にたい」という願いを叶えたはっぽんさん。19年11月、秋田市で開かれた葬儀では親族・友人らから「はっぽ、はっぽ」と声をかけられ見送られました。(秋山晴康)

▼今年はちょっとした不調が続き、医者がよいで大変でした。最後に来たのが、銀歯のかぶせものが取れるアクシデント。この歯はなぜか、頻繁にかぶせものが取れてしまういわくつきで、前回取れたとき「次に取れたらやり直した方がいい」と言われていたので、今回作り直すことに。ちょっと削って型を取って、「来週できてくるから」とのこと(この後記を書いている時点ではまだできていない)。会計時、

「次回は6000~7000円用意してきてください」

「えっ? 保険なんじゃ......?」

「保険だけど、今、銀がすごくあがっていて......」

「ええっ?」

「ロシアとウクライナの影響みたいで、今年に入ってから、何回も値上がりしてるの」

 食べ物やエネルギーだけでなく、歯のかぶせものにまで影響が出ているなんて、ちょっとビックリでした。来年はよい年になりますように。(渡辺妙子)

▼気がつけば本年最終号です。2022年も本誌は激動の時代状況を報じてきました。ただし、それを可能にしたのは多くの支えがあるからにほかなりません。

 言葉を紡ぎだす多くの執筆者のみなさま。毎週深夜から早朝にかけて印刷・製本を行なう「凸版印刷」。タイトな時間内で定期購読のラッピング作業を行なう「家の光製本梱包」。どんな悪天候であっても、全国の読者に配達する「日本郵便」。厳しい経営環境が続くなか、本誌を工夫して販売する書店さん。そして発売日を心待ちにしてくれる読者のみなさま。デザイナーさん、DTPオペレーターさん、校閲さん、取次会社、広告主に代理店、図書館、運送関連、古紙業者等々、挙げればきりがありません。また今年も多くの支援金が寄せられました。この場をかりて本誌にかかわる、すべてのみなさまに心から感謝申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 来年の秋、『週刊金曜日』は創刊30周年を迎えます。(町田明穂)