週刊金曜日 編集後記

1409号

▼「不幸になるぞと集金するカルト 攻撃されるぞと増税する政府」。これは昨年末、広島のとある寺院の門前に半紙で掲げられた格言である。巧みな表現で詐欺師の手口を的確に言い表している。

 岸田文雄首相は近隣諸国の脅威を煽り、"国の防衛のため"に所得税、法人税、たばこ税の増税を決めた。そしてそれは「今を生きる国民の責任として対応すべき」ものとした(のちに苦し紛れに、「国民」を「われわれ」に修正)。

 防衛費増額にかかわる増税は国政選挙で問われておらず、民意を得たわけではない。安保政策を大転換し、敵基地攻撃能力を持つ米国製のミサイルを買うための負担増に国民が対応する必要はない。

 そもそも岸田首相は「政治とカネ」をめぐり相次いで辞任した閣僚の問題や統一教会と自民党の不透明な関係の解明など、現政権の責任にどう対応したというのだ。

 カルトに従えば、身も心も滅ぼされるというが、このままだと国が滅びそうである。(尹史承)

▼「毎年夏のボーナスを使い果たし、東北で演奏活動を行なっていました」。そう話すのは「すすきだ音楽隊」のヴァイオリニスト、薄田真さん。読売日本交響楽団のメンバーで、東北3県や熊本などの被災者を音楽で励まそうと、2013年より打楽器奏者の妻、真樹さんらとともに活動している。

 年々参加メンバーが増え、今は被災地への寄付や活動資金のために、東京でも演奏会を行なう。「僕らの後ろには被災地へのたくさんの応援がある」と薄田さん。今月末からはこの「応援」を携えて、東松島市や南相馬市などで演奏会を予定。いずれも入場無料だ(http://maxien-per-mari.blog.jp)。

 東京・町田市で行なわれた演奏会は、ヴァイオリンとチェロ、ピアノ(パーカッション)の組み合わせ。スタンダードを中心に、聴衆も参加してボディ・パーカッションを行なうなど、子どもも大人も楽しめる構成だった。私の「応援」も東北に持って行ってね。もうすぐ「3・11」。(吉田亮子)

▼2年程前から「1人エスカレーター歩かない運動」をやろうとして、やりきれずにいる。「ぶつかられて危ない思いをした。エスカレーターは歩かないで」という声を耳にしたのがきっかけだが、完全に右側に立つのはぶつかられる危険や怒鳴られる可能性からハードルが高い。やや中央寄りに立つのがせめてもの日々だ。

 埼玉県には「立ち止まった状態で利用しなければならない。」とする条例があり、名古屋市でも制定を検討中らしい。最近は「エスカレーターでは立ち止まろう」といったポスターも目にするが、まだまだ呼びかけに本気が感じられない。駆け上がる人はポスターなんか目に入らないし。手すりに「歩かないで、歩かないで......」、ステップにも「歩くな!」と書くとか――いっそ前の人のTシャツに「歩かないで」と書いてあれば、今後は堂々と右側に立てるかもしれない。そんなTシャツに需要はありませんか?(志水邦江)

▼高校時代の同期が意外に"ご近所さん"ということを、つい最近知りました。高校卒業後、田舎町を出て、行き先が東西に分かれたためか交流が途絶えていました。

 彼が駅前にクリニックを開いている町には、何度も足を運んだことがあります。前回も触れた山谷初男(はっぽん)さんが秋田に旅立つ直前、「中華料理をごちそうするから」と連れて行ってもらったのが、駅そばの「日高屋」でした。町のライブハウスで行なわれた、年末恒例のはっぽんさんのコンサートにも足繁く通いました。つまり、そのクリニック前を幾度となく通っていたことになります。

 同期と連絡を取り、第8波が落ち着いたら会おうと約束しました。コロナ規制緩和の動きもある中、医師としてクリニックや家庭に感染を持ち込むことを避けるため、公私ともに外食をひかえているといいます。日本でコロナ感染者が初めて確認されてから1月で3年になりました。(秋山晴康)