週刊金曜日 編集後記

1414号

▼2004年、イラク国内で高遠菜穂子さんらが武装勢力に誘拐され、自衛隊撤退を要求された。3人の"日本人"人質へのバッシングに我慢ならず、仲間とともに『イラク「人質」事件と自己責任論 私たちはこう動いた・こう考える』(大月書店)を緊急出版した。生還した高遠さんは東日本大震災時には、私が暮らすフクシマ原発近くの新聞社の支局兼自宅に泊まり、被災者支援に尽力した。俗論による人格攻撃へのトラウマが癒えない中、逆に原発サイトに入域しすぎてヒバクシャとなっていた私の健康を心配してくれていた。

 高遠さんは数年前からイラク北部のトルコ・シリアとの国境地帯に事務所を開いていたから、今回の震災ですぐに電話した。やはりいち早く被災地に入っていた彼女を取材し、先週号で緊急報告した。内戦の続くシリア国内の状況はさらに厳しい。がれきの下に閉じ込められた5歳の少女は消防士に「あなたの召使いになりますからここから出して下さい」と哀願した。子どもを誘拐し、兵士や"召使い"にしてしまう武装集団が影響力を行使した地でもある。(本田雅和)

▼ホームページの書き込みやお手紙などで「さらん日記」へのコメントをいただきます。「一番先に見ています」「漫画の枠外の絵も好きです」などのお言葉に作者も喜んでいて、「フレームに描いたお鍋が美味しそうというコメントをいただいたので今回はお菓子にしました」など、作品にも反映されています。「実際の農作業の動きは絵と違う」などの貴重なご指摘もあり、作者とともに担当も反省し、より念入りにチェックするようになりました。隅々まで見てくださっていることに感謝します。また、転載記事申請も多いので、各地の活動に活用してくださっていることも嬉しく思います。

郵便法改定の影響で昨年から校了日が火曜日から月曜日になり、原稿締切が早まりました。漫画の編集作業は手順が多いため記事原稿よりさらに締切が早くなったのに、作者は「土日でネタを仕込んで新鮮な気持ちで案出しできるから、かえっていいかも」と前向きに対応してくださいました。逆境を力に変える姿勢を見倣い、今後もついていきます!(宮本有紀)

▼裁判官をクビにするかどうかを決める「裁判官弾劾裁判所」をごく簡略に説明すれば、「国会議員が検察官役を務め、国会議員が裁判長と裁判員となって裁判官を裁く法廷」である。

 岡口基一・仙台高裁判事(訴追によって職務停止中)の弾劾裁判はすでに3回の公判が終わった。

 弾劾裁判を取材するためには、裁判長の許可を公判ごとに得なければならない。司法記者クラブに入っていない『週刊金曜日』だからか、1回ごとに許可申請書を出し、許可を受けて、クビからぶらさげる取材許可証と撮影許可証を頂いている。

 それで愚痴をこぼすほどの不満があるわけではない。むしろ毎回、公判に足を運び、取材席に身を置き、互いの主張に耳を傾けることによって、私の頭の中で次第に鮮明になってくるものがある。

 今回の裁判は、弾劾裁判史上、最も難しく、かつ重要であり、弾劾裁判制度の信頼性そのものが問われるかもしれない――。そう思うのだ。後日、誌面でしっかりご報告します。(佐藤和雄)

▼2月19日、三重県に行ってきました。地元の労働組合に講演を依頼されたからです。テーマは「敵基地攻撃能力保有――どうなる日本」。軍事ジャーナリストや憲法学者ではなく、編集者に依頼した理由について「さまざまな情報をわかりやすく総合すること」だと考え、パワーポイントを使いながらていねいに説明しました。

 講演前に開かれていた春闘方針を決定する会議も少し傍聴させていただきました。個人加盟の半数以上が在日外国人となっているそうで、組合幹部が通訳にあたっているのが印象的でした。在日外国人は有期雇用や派遣で働くことが多く、この組合でも〈非正規労働者を正社員と平等な処遇にさせる〉ことなどを掲げています。

 さて、昨年は四日市公害訴訟の一審判決(原告住民側勝訴で確定)から50年の節目でした。近鉄四日市駅に近い「四日市公害と環境未来館」の充実した展示を見ながら、この訴訟の支援に地元の労働組合が果たした役割についても再認識しました。労働組合などの中間団体は、新自由主義に抗するのに重要ですね。(伊田浩之)