週刊金曜日 編集後記

1416号

▼紙幅の都合で入れられなかったが、特集に登場する金繁典子さんがかつてスウェーデンに行き、どうやって国会の女性議員を半数近くまで増やしたかを各政党の女性組織の人たちにインタビューした時の話も、とても興味深かった。

「女性組織を政党の中ではなく別につくっているんです。なぜかというと、党内にあると男性が支配しようとするから。女性が議員になるための研修の運営補助金も、党を介さず国から直接、女性組織が受け取ることになっている。すべての党が、選挙候補者の名簿を男性・女性と交互にする党内規則で、それも女性組織が連帯して各党に実現させたんですって。女性で連帯するという意識が党を超えて共有されていることに感動しました」と話していた。

「まずは自分の組織の中で連帯する。その次に組織を超えて連帯することが大事ですよ」と言われたことを実践し、県内の女性議員たちとネットワークをつくって問題を共有。政策に役立てているという。暗いニュースが続く中、頼もしい女性議員たちの活躍に、希望が湧いてきた。(宮本有紀)

▼隣国の急激な軍拡を理由とした「防衛のための軍拡」を求める論考を弊誌2月24日号に掲載した。

 量的拡大がすべての問題を解決するがごとき幻想を与えたのが、戦前から戦時に跋扈した「大日本主義」だ。当時の主張も「軍拡は決して他国を侵略する目的ではない」「他国の脅威に備えるため」であった。しかしそれが紛争解決の手段にならないことは歴史が何度も証明している。「小日本主義」を提唱した石橋湛山は「わが国の独立と安全を守るために、軍備の拡張という国力を消耗するような考えでいったら、国防を全うすることができないばかりでなく、国を滅ぼす」「軍隊でもって日本を防衛することは不可能である」と帝国主義を断じた。そして戦争放棄の憲法9条を、「痛快極まりない」と評し、「区々たる平常の軍備の如きは問題でない。戦法の極意は人の和にある。(略)一切の小欲を棄てて進むならば、おそらくはこの戦争に至らずして、驕慢なる国は亡ぶるであろう」と論じる。

 没後50年、彼の理念に思いを馳せる。私はいかなる理由があろうと軍拡の主張には与しない。(尹史承)

▼原発事故直後から福島に通い、ドキュメンタリー映画『福島は語る』などを発表してきた土井敏邦さんが、さらに被災者の証言を記録する2作品を制作中だという。『津島 福島は語る・第二章』は故郷を追われ各地に散った浪江町津島地区の元住民たちが、原発事故によって何を失い、奪われ、破壊されたのかを語る。一部公開された映像では、「津島では銭はなかったけど楽しさ、貧乏だったけど楽しさ、俺はここで生きてる!という楽しさがあった」と方言で語る須藤カノさんの姿があった。

 昨年、東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)を訪ねたときに、入り口で流れた西田敏行さんの方言にやられてしまったことを思い出す。高齢者施設にいる福島出身の父と重なり、もうこんな言葉は聞けないのかと思うと涙が止まらなかった。「被災者の記憶は薄れていく。いま証言を遺さなければ」と土井さん。語る姿はそれ以上に多くを後世まで伝えるだろう。『第三章』も合わせ、作品の制作と公開のために現在クラウドファンディングを募集中(https://motion-gallery.net/projects/toshi0000)。(吉田亮子)

▼知人から送られてきたあるリンク。BBC東京特派員のルーパート・ウィングフィールド=ヘイズさんという方が、離任にあたり書いた「日本は未来だった、しかし今では過去にとらわれている BBC東京特派員が振り返る」という記事だ。1月に「BBC NEWS JAPAN」のウェブサイトで発表された。

 この方が初めて日本に来たのは1993年。その後に特派員として10年、日本で暮らし、日本社会を見てきた。かつて「アジアのどこよりも裕福で、清潔で、きちんとしていた」日本が、今や実質賃金は30年間上がらず、行き詰まっている。時代に即さない考え方や政治体制があちこちにあり、「日本は変化を受け入れなくてはならない」のに、一方で「日本をこれほど特別な場所にしているものをこの国が失うのかと思うと、心は痛む」と結ぶ。

「変化を求めない」ことが日本たるゆえんであるという指摘は辛辣だ。ぜひ読んでみてほしい。https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64357046(渡辺妙子)