週刊金曜日 編集後記

1417号

▼「『政治的公平』に関する放送法の解釈について(磯崎補佐官関連)」と題された78ページの文書を最初から最後まで読んだ。本誌では先週号で編集委員の田中優子さんが「風速計」で、今週号では臺宏士さんが「メディアウオッチ」の拡大版で取り上げている。

 私は全国紙の政治記者として、舞台となっている首相官邸を何度か担当した。加えて大学でジャーナリズム論を教えていた時には、学生たちに放送法をめぐる政治とメディアの攻防を説いていた。

 それだけに、「厳重取扱注意」の印がついた総務省のこの内部文書を読んだ時には身が震えるほど興奮した。同時に、表現は不埒かもしれないが、面白い政治ドラマを見ているようにも感じた。

 主演の一人である礒崎陽輔首相補佐官(当時)は、官僚に対し「ただじゃあ済まないぞ。首が飛ぶぞ」と凄む、すばらしい悪役キャラ。対する山田真貴子首相秘書官(同)のこの言葉も鋭い。「政府がこんなことしてどうするつもりなのか。どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」。

「エルピス パート2」になるんじゃないだろうか。(佐藤和雄)

▼「立憲民主党としては、入管問題は一丁目一番地の問題として取り組まなければならないと思っています。憲法が最高の価値とする個人の尊厳に関わるからです。これは立憲民主党が何をやるための党なのかという政党のレゾンデートル(存在意義)にかかわる問題です。その立場を示した上で、普遍的問題として訴えていきたいと思います」──。

「入管法改正案」が廃案になった2年前の2021年。当時の法務委員会野党筆頭理事を務めていた立憲民主党の階猛議員は、この年の10月に「週刊金曜日オンライン」で本誌編集委員の中島岳志さんと対談し、冒頭のように語った。

 あれから2年経ち、入管行政のさまざまな問題は改善されていないにもかかわらず、再び当時の骨格を維持した入管法改悪案が閣議決定され、国会に提出された。市民が反対の声を広げるだけでは、再び廃案にすることは難しいだろう。野党が「一丁目一番地の問題として」徹底した姿勢を見せて取り組めるかどうかが、非常に大きな鍵になる。これは、「個人の尊厳」、そして命の問題である。(渡部睦美)

▼東日本大震災と福島第一原発事故を忘れないためのイベントがこの時期、各地で開かれています。

 3月13日には東京・参議院議員会館で山形県長井市の「影法師」(http://www.kageboushi.jp/)を招いた集会がありました。都市のゴミが東北に押し寄せた問題を発端に作られた『白河以北一山百文』など、反骨心や諧謔味あふれるレパートリーで知られるフォークグループです。集会には、山形県酒田市出身の歌手、白崎映美さん(http://emishirasaki.com/)が参加。彼女は東日本大震災を機にバンド「白崎映美&東北6県ろ~るショー!!」を結成、『まづろわぬ民』(従順でない、迎合しないという意味)などの曲を発表しています。同市出身の佐高信さんも、いつもの歯に衣着せぬ発言で満席の会場を大いに沸かせました。

『飯舘村 べこやの母ちゃん──それぞれの選択』(古居みずえ監督)も良い映画でした。全村避難を余儀なくされた飯舘村で牛(べこ)と共に生きてきた女性たちを10年以上追った作品です。東京・東中野での上映は3月17日まででしたが、今後、全国で順次公開されます。お薦めです。(伊田浩之)

▼ことし成人式を迎えた姪2人に新型コロナ、特にワクチンの話を聞いてみました。1人は3回接種していましたが、もう1人はワクチン接種反対派。未接種の理由は、感染状況の内訳を見たとき、接種者より未接種者のほうが感染者が少なかったりしたことから、接種に不信感を抱いたそうです。

 実際、厚生労働省がまとめたワクチン接種歴別陽性率のデータ(2022年8月22日~28日)によると、未接種者のコロナ感染状況について、20~49歳、60~79歳の層では2回目接種済み者よりも少なく、30~49歳、65~69歳の層では3回目接種済み者よりも少ないという結果が出ています。

 さて、3月13日からマスク着用について「個人の判断が基本」となりました。ただ、今のところ通勤車内では、マスクを外している人はチラホラ見かける程度です。

 本誌3月10日号の「言葉の広場」で「マスクについて丁寧な説明をしてほしい」というご投稿を掲載させていただきましたが、私も同意見です。気管支系が弱いこともあり、マスクはしばらく手放せそうにありません。(秋山晴康)