週刊金曜日 編集後記

1419号

▼伊方原発の仮処分記事(28ページ参照)は紙幅の都合上、「立証責任転換論」を中心にした。だが、広島高裁の決定にはまだ不当な点がある。住民らは、伊方最高裁判決の判断を踏まえて、規制基準自体が不合理であれば、人格権侵害の具体的危険が認められると主張してきた。だが、決定はこう記す。

〈判断に用いられる具体的な審査基準(新規制基準)に不合理な点があるとしても、それだけで、直ちに抗告人らの生命、身体等が侵害される具体的な危険があるとの疎明がされたとはいえない〉

 これは原子力規制のありようを根本から否定する考えではないか。

 抗告人の哲野イサクさん(74歳)は決定後の会見でこう述べた。「裁判所が追い詰められている。あーいう非論理に逃げ込むしか、電力会社を勝たせる手段がない。あと一押しだ。良い裁判官がいることを信じ、諦めないで(裁判闘争を)やっていこう」

 なお、住民らは最高裁への抗告を見送った。いまの最高裁では、政治権力迎合型の判断が下されるだろう、という意見が優勢を占めたためだという。(伊田浩之)

▼文部科学省は、2024年度から小学生・高校生が使用する教科書の検定結果を公表した。小学校道徳では、学習指導要領が挙げる「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」の扱いが不十分との検定意見が大幅に増加した。

 小学校の道徳授業は、18年から教科化され、児童の評価対象となっている。その項目に愛国心が公然と掲げられているのである。中学校の指導要領には、「日本人としての自覚をもって国を愛し」との記載もある。国が自ら愛国思想を市民に強制する異常さは戦前、戦時中となんら変わりがない。

 14年の安倍政権下において改訂された検定基準では、「政府見解に基づく記述」という規定が加えられた。これは事実上の検閲であり、教育への政治介入である。

 日本の植民地支配をめぐる記述では「強制連行」とひとくくりに表現するのは不適切と閣議決定され、「従軍慰安婦」も「誤解を招く」とされた。沖縄戦の「集団自決」なども「軍関与」に言及しない方針を採る。教育現場で「歴史修正」が行なわれているのが現状だ。加害の歴史を為政者の都合でゆがめてはならない。(尹史承)

▼昨年の本誌9月16日・23日合併号に写真企画「あめつちのことづて」を掲載した。撮影者は熊本県水俣市在住の豊田有希さん。チッソ水俣工場のある水俣市から約40km離れた山間集落の多くの住民に水俣病の症状が確認されたことを知り、この土地に身を置き、触れる土地や人々の中から不確かな感触を集めながら撮影した作品だ。

 この掲載がひとつの縁となって、4月11日から23日まで京都市寺町にあるギャラリーヒルゲート(地下鉄市役所前駅)で「豊田有希展
あめつちのことづて」(12時~19時。無料)を開催することとなった。初日にはトークイベント「そこに在る言葉にならない言葉を撮る」(18時から19時半。要予約。1000円)も開かれる(詳しくは3月31日号「きんようびのはらっぱで」に掲載)。近郊の方は期間中に京都を訪れて、一つひとつの写真をその目で見て、それぞれに感じてもらえると嬉しい。

「写真を撮り続けること」が重要なのだ。時代は変わるがそこに記録されたものは、普遍的に印画紙に定着される。それは貴重な歴史の記録となる。そのままを撮ればいい、とエールを送る。(本田政昭)

▼初めまして。総務経理課に配属となりました桑島です。私の趣味についてお話しさせていただきます。コロナ禍の前と後では、ライフスタイルが変わり外出自粛により「おうち時間」の過ごし方が変化した方が多いのではないでしょうか。私は買い物、友達との食事会、ホットヨガが趣味でした。そんな中、自宅で過ごす時間が増え、「おうち時間」を充実させるためにネットフリックス、アマゾンプライム、楽天Koboに登録しアニメや漫画をここ2、3年で45作品以上観ました。人というのは環境に大きく左右されるというのをよく耳にしますが、まさか自分がハマるとは思いませんでした。アニメや漫画は奥が深く、人生や生き方を考えさせてくれる、大事なことを改めて思い出させてくれる作品がたくさんあります。今まで知らなかったことを知ることによって、意識や価値観が大きく変化するなと感じました。週刊金曜日という新たな環境で働くにあたり、自分にどんな影響を与えてくれるのか、また自分もどんな影響を与えられるのかとてもワクワクしています。(桑島未樹)