週刊金曜日 編集後記

1420号

▼ついにマイナンバーカードが、「ほぼすべての国民に行き渡らせる水準までは到達した」(松本剛明総務相、4月4日会見)という。しかし数を確認すると、申請枚数の人口に対する割合は約76・3%。およそ4人に1人は申請していない計算となるが、 "マイナンバーカードの事実上義務化"の動きは強まっていくばかりだ。来年秋に健康保険証が廃止される計画だが、先立って4月1日から、「マイナ保険証」に医療機関が対応することが義務化された。『東京新聞』4月2日付「こちら特報部」記事によると、システム整備を導入することへの負担から、閉院を決意するケースも出ているという。

 こうした状況に対し、4月7日には国会前抗議や「#保険証廃止法案の撤回を」とするツイッターデモが行なわれた。健康保険証の廃止を含む法案はもうすぐ審議入りだ。廃止反対のオンライン署名(https://chng.it/5fRzCqKRcy)も始まっている。(渡部睦美)

▼重曹、漂白剤、セスキ炭酸ソーダ......。友人はこれで除去を試みているとか。先週号の「香害」では柔軟剤の香りの除去方法までは触れられなかったので、いくつか紹介したい。いずれも、くわしくは『プロブレムQ&A香害入門 日用品に含まれる化学物質による新たな公害』(緑風出版)まで。

 著者の深谷桂子さんによると柔軟剤使用者からの移香は、手間はかかるけれど香料入りマイクロカプセルの付着をほぼ除去できるという。洗濯できない衣類は粘着ローラーで除去し、天日干しにすれば紫外線でプラスチックの結合が壊れやすくなり、風で吹き飛ばされる(!)。洗濯可能な衣類はクエン酸を溶かした湯に漬け込み酸化させるとプラスチックの結合が弱まり、水ですすいで石けんで洗い、中和させるとよいとのこと。

 しかし一方で、マイクロカプセル使用の柔軟剤で洗濯してしまうと、完全除去はできないとバッサリ。またあらためて取り上げたいが、お気をつけて。(吉田亮子)

▼小西洋之議員が衆院憲法審査会メンバーを猿に例えたことが批判されたが、山本太郎議員の「こんな姑息なルール変更を猿はやらない」「全ての猿に対する真摯な謝罪を求めたい」との発言に共感する。

 10年前まではよく衆院憲法審を傍聴したが、毎回「これのどこが議論なんだ」と憤慨していた。審査会会長も注意するほど自民党議員の欠席や遅刻が目立つうえ、自分の発言後は退出したり在席していても発言を聞いていなかったりする議員が多かったからだ。

 たとえば2012年8月2日の傍聴メモにある石破茂議員の動向は「9:30に登場 柴山(昌彦議員)のところに行って話す(「生活の党」発言中)→本を手に取りパラパラとみる(9:38)→公明党発言時も読んでいる→共産党発言時も読んでいる→9:59に退出(社民の発言中)」とある。約2時間半の会議中30分もいない。他の自民党議員も似たりよったりで「学級崩壊」状態だった。確かに猿に例えるのは猿に悪い。(宮本有紀)

▼ノンフィクション作家の川田文子さんが亡くなりました。79歳でした。胃がんの手術後もお元気で取材や講演をしていらっしゃったので、本当にビックリです。

 川田さんと知り合ったのは、1994年か95年頃、都内で行なわれた、元「慰安婦」の方々の証言集会でご挨拶したのが最初でした。黒の上下で柄物のスカーフを首に巻いた川田さんのいでたちはおしゃれで、一目でファンになりました。そして、川田さんの淡々とした筆致も大好きでした。歴史に埋もれた女性たちの声を拾い続けた川田さんのお仕事の数々を、心から尊敬しています。

 本誌に記事として書いていただいたのは、在日の元「慰安婦」宋神道さんの追悼記事が最後になりました(2018年2月9日号)。川田さんと一緒にお仕事できたことは、私にとって人生の糧です。ご冥福をお祈りいたします。(渡辺妙子)