週刊金曜日 編集後記

1423号

▼自民党のなかに殺傷能力を持つ兵器をウクライナに送ろうとする動きがあるらしい。危険だ。

〈自民、公明両党は(4月)25日、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しに関する実務者協議の初会合を国会内で開いた。〉〈現行の指針は殺傷能力のある兵器の供与を国際共同開発国に限っており、ロシアの侵略を受けるウクライナへの提供は防弾チョッキなどにとどまっている。〉〈自民側は殺傷能力のある兵器の輸出を解禁したい考えで、5月19~21日の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に向けて緩和を打ち出したいという思惑もあった。〉(4月25日、「THE SANKEI NEWS」)

 日本はG7で唯一、殺傷兵器をウクライナに供与していない。日本の兵器がロシア人を殺す、もしくはロシアに奪われた日本の兵器がウクライナ人を殺すことになれば「平和国家」の印象は大きくくつがえる。サミットで真に話し合うべきことはなにか。その一助として特集を組んだ。(伊田浩之)

▼今まで年に2回だった「きんようパズル」をこの4月の合併号から、ほぼ月に1回で掲載することになった。「クロスワード」や「まちがい探し」ぐらいしか解いたことのない私に、「数独」はハードルが高い。実は、通勤時間を何日も使って解いている(ハァ......)。

 パズル制作を依頼しているニコリの担当者は、子どものころから数独の問題を作っては雑誌『パズル通信ニコリ』に投稿していたとか。また驚いたのは、コンピュータではなく、人が問題を作るということ。そうでないと、明かされる数字の配置の美しさなどが出ないのだという。パズル作家にファンが付くというのも納得できる。

「数独=SUDOKU」命名者でニコリ創業者の鍜治真起さんは、世界中のパズルファンから「数独の父」と呼ばれ親しまれていた。2021年に69歳で亡くなったが、そのいきさつは『すばらしい失敗「数独の父」鍜治真起の仕事と遊び』(ニコリ)にくわしい。最後に、彼は本誌読者だったことも付け加えたい。(吉田亮子)

▼4月末に京都府舞鶴市の路上で指の一部が発見された事件。その後、指は60代の配達員のものであることが判明したが、報道によると、配達用の車のスライドドアで指を切断してしまったものの、そのまま配達を続け、病院にも行っていなかったという。この報道で思い出したのが、ラーメンチェーン「幸楽苑」の従業員が2016年にチャーシューのスライサーで指の一部を切断してしまった事件だ。切断部分を探すこともできないまま、結局一部が来店客に提供されてしまい、事件が発覚した。指を切り落としてしまっても、労働に従事しなければいけない環境とはなんなのか。

 物価の値上がりが続く中、健康保険料や雇用保険料、介護保険料などまで値上げされ、生活はひたすらに苦しい。さらに非正規雇用、アルバイトという立場の場合は、特に雇用維持への心配も大きくつきまとう。本社もここ数年で非正規雇用が増加し、他人事ではない。(渡部睦美)

▼4月7日号の想田和弘さんの風速計「中国の英語教育」を読んで思い出したのが、中国映画『クレイジー・イングリッシュ』(1999年)だ。中国人向けの英語勉強法で一躍名をはせたリー・ヤンさんという方を追いかけたドキュメンタリーで、広い中国を駆け回り、自らが考案した勉強法を売り込んでいくさまは、勉強法の紹介であると同時に、リーさんのサクセスストーリーでもある。

 大昔に1回見ただけなので細部は忘れたが、覚えていることがひとつだけ。それは「英語を話すときと、中国語を話すときでは使う筋肉が違う」という教え(?)だ。同じフレーズを大声で何回も繰り返して発話することで、英語の発音方法を徹底的に体にたたきこませる。手法としては決して新しくはないが、とにかくそのパワフルさだけが記憶に残っている。

 DVDにもなっているようだし、有料配信サービスなどでも見られるようなので、興味があったらどうぞ。(渡辺妙子)