週刊金曜日 編集後記

1425号

▼5月の大型連休中、東日本大震災の被災地を巡った。釜石、陸前高田、気仙沼、南三陸、石巻、閖上、福島の浜通り。新聞記者時代、東北での被災地取材の機会はなかったが、初めて現地を歩いてみると、活字やニュース映像からは分からない被災地の様子が見えた。

 以前から訪れたかったのが陸前高田市。7年ほど前、海から離れた台地を大規模にかさ上げし、新しい市街地を造る事業についてテレビ番組で見たことがあった。震災から12年たち、かさ上げ地ができ、市役所やスーパー、商店、博物館が整備され、新たな街ができていた。まだ空き地は多いが、人々が行き交い、多くの市民が努力を重ねたことがうかがえた。

 毎年、「3・11」の前後には被災地の現状が多く報道される。だが、東京で日常を過ごしていると、震災を考える機会は少なくなっている。「あの日」を忘れず、社会全体が教訓をかみしめ、備えることが大切だと改めて感じた。(小川直樹)

▼「坊や大きくならないで」「美しい昔」などの哀しい調べのフォークソングは1970年代、ベトナム反戦運動を担った世界の若者の心をとらえた。作詞・作曲のチン・コン・ソンは、最激戦地・中部高原の少数民族の出身だ。少数と言っても山岳民族は、当時のベトナム総人口の7割を占めた。多様な言語と文化で何千もの部落共同体に分かれ、標高2000メートル超の峰々を走破して侵略軍と闘い続けた。その力なくしては解放軍の米帝撃退はならなかった。

 共産主義や社会主義などというイデオロギーではない。一人ひとりが自立し、不思議な死生観をもつ「森の民」。死ぬと一定期間は「墓」に祭るが、その後は訣別の儀式をし、あとは捨ててしまって「人間を森に送り返す」。この話は、自ら中部高原での多くの戦闘に参加した作家グエン・ゴックの作品に、ジャーナリスト鈴木勝比古氏の邦訳で紹介されている。いつか訪ねてみたい。(本田雅和)

▼長男猫が亡くなって、5月で2年になりました。ペットロスは、何年たとうが変わることはありません。この5年で5匹の猫を見送りました。どの猫もそれぞれの思い入れがありますが、長男猫だけは別格と言えるかもしれません。

 理由の一つは、わが家で最初に迎えた家族だったこと。里親となったのは、介護雑誌の編集に携わっていた頃のことです。5匹の中ではもっとも長生きしたことや、ノブを操作して閉まったドアを開けたりするなど利発だったこと、それから介護情報の交流会の会名に使わせてもらったこと......など、数えあげればキリがなくなります。

 5匹もいると、いつ亡くなったのか忘れてしまったりします。ただ、そこはひと工夫。「ポケモンGO」というゲームがありますが、ゲットしたポケットモンスターで似ているものを選び出し、それぞれの猫の名前と亡くなった日を記しています。長男猫の命日には、ゲーム内でそのキャラクターと一緒に散歩しました。(秋山晴康)

▼「週刊金曜日サポーターズ」がスタートして1カ月がたった。『週刊金曜日』は、これまでも多くの方々から支援金をいただき、今日まで存続してきた。今回はそれに加えて、簡便に少額の支援ができるようになった。

 1000円から1万円の間で毎月自動決済されるマンスリー・サポートと、1回限りの単発決済であるワンタイム・サポートの2種類。1カ月の実績を見ると、マンスリーが57%、ワンタイムが43%でマンスリーが上回っている。

 メッセージ欄には、「頑張ってください」「応援しています」といったエールだけでなく、「絶対になくしてはいけない」「真のジャーナリズムを貫け」といった激励もいただいた。

 サポーターとの絆を深めるメルマガ「サポーターズ通信」を5月12日に配信した。取材の裏話や、とっておきの話などで構成する。

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